平成30年度 税制改正のポイント
デロイト トーマツ税理士法人
藤澤 文太 / 秋篠 秀弥 / 石川 開晟
(1) 所得拡大促進税制の改組
高い賃上げ及び設備投資や人材投資に積極的な企業に対する支援を強化するため、適用要件及び控除税額の算定方法が見直されました。従来の賃上要件のひとつである、基準事業年度との比較は廃止され、継続雇用者の賃上げの判定もより簡便な方法へ改められました。
また、税額控除額は基準年度からの増加額の一定割合ではなく、前年からの増加額に一定割合を乗じて算出されることとなりました。
中小企業者等以外の大企業(資本金1億円超など一定の要件を満たす法人)向けの改正
大企業については、賃上要件に加え新たに設備投資要件も満たした場合に限り、税額控除が認められることとなりました。さらに、教育訓練費増加要件(新設)を満たした場合には、税額控除割合の上乗せが認められることとなります。 また、控除限度額が法人税額の20%(改正前は10%)に引き上げられました。
改正前 |
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改正後 |
適用要件 |
① 賃上要件 |
a |
雇用者給与等支給額 ≧ 基準雇用者給与等支給額×105% |
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削除 |
b |
雇用者給与等支給額 ≧ 比較雇用者給与等支給額 |
雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額 |
c |
平均給与等支給額 ≧ 比較平均給与等支給額×102% |
継続雇用者給与等支給額 ≧ 継続雇用者比較給与等支給額×103% |
② 設備投資要件 |
— |
国内設備投資額 ≧ 当期償却費総額×90% |
③ 教育訓練要件 (上乗せ)追加 |
— |
教育訓練費 ≧ 比較教育訓練費(*1) × 120%
(*1) 適用年度開始の日前2年以内に開始した各事業年度の教育訓練費の額の年平均額
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税額控除 |
算定方法 |
(雇用者給与等支給額-基準雇用者給与等支給額)×10% + (雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×2% |
適用要件①②を満たす場合 |
(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×15% |
適用要件全て満たす場合 |
(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×20% |
限度額 |
当期の法人税額の10% |
当期の法人税額の20% |
対象法人 |
青色申告法人(設立事業年度は平成29年度税制改正以後は原則として適用されないが、合併・分割による場合などに適用される場合もある) |
青色申告法人(設立事業年度は対象外) |
中小企業者等(資本金1億円以下で一定の要件を満たす法人)向けの改正
中小企業者等については、大企業と異なり設備投資要件は導入されず、賃上要件を満たせば税額控除が認められます。さらに教育訓練費増加要件など一定の要件を満たすことで、税額控除割合の上乗せが認められることとなります。 なお、中小企業者等の控除限度額は、改正前と同様に法人税額の20%までとなっています。
改正前 |
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改正後 |
適用要件 |
賃上要件 |
① |
雇用者給与等支給額 ≧ 基準雇用者給与等支給額×103% |
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削除 |
② |
雇用者給与等支給額 ≧ 比較雇用者給与等支給額 |
雇用者給与等支給額 > 比較雇用者給与等支給額 |
③ |
平均給与等支給額 > 比較平均給与等支給額
※継続雇用者がない場合には、自動的に要件を満たす
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継続雇用者給与等支給額 ≧ 継続雇用者比較給与等支給額×101.5% |
税額控除 |
算定方法 |
(雇用者給与等支給額-基準雇用者給与等支給額)×10% + (雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×12%
(注: 賃上げ率2%以上の場合)
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上乗せ措置適用なし |
(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×15% |
上乗せ措置適用あり |
(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×25% |
限度額 |
当期の法人税額の20% |
当期の法人税額の20% (改正なし) |
対象法人 |
青色申告法人(設立事業年度の適用可) |
青色申告法人(設立事業年度は対象外) |
- 追加 上乗せ措置
-
以下の①および②の要件を満たす場合
- ① 継続雇用者給与等支給額 ≧ 継続雇用者比較給与等支給額 × 102.5%
- ② 以下のいずれかの要件を満たす
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a. 教育訓練費 ≧ 中小企業比較教育訓練費(*1) × 110%
(*1) 適用年度開始の日前1年以内に開始した各事業年度の教育訓練費の額の年平均額
-
b. 事業年度終了の日までに中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたもので、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明されたものであること。
用語の解説
所得拡大促進税制に関する用語については、以下のようになっています。
新設される用語
教育訓練費
国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるための費用で次のものをいう。(当該事業年度の所得の金額の計算上損金に算入されるものに限る)
- a. その法人が教育訓練等(教育、訓練、研修、講習その他これらに類するものをいう。)を自ら行う場合の外部講師謝金、外部施設等使用料等の費用
- b. 他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合のその委託費
- c. 他の者が行う教育訓練等に参加させる場合のその参加に要する費用
設備投資
- 国内設備投資額
-
法人が適用年度において取得等をした国内資産(国内にある当該法人の事業の用に供する機械及び装置その他資産で一定のもの)で適用年度末において有するものの取得価額の合計額
- 当期償却費総額
-
その法人の有する減価償却資産につき適用年度の償却費として損金経理をした金額(過年度の償却超過額等を除き、特別償却準備金として積み立てた金額を含む。)の合計額
改された用語
継続雇用者 |
【改正前】 適用年度及びその前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者
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【改正後】 適用年度及び適用年度開始の日の前日を含む事業年度の期間内の各月において給与等の支給がある国内雇用者として政令で定めるもの
※参考: 現行の継続雇用者から、前期中途入社した者や当期中に退職した者が除外される
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継続雇用者給与等支給額 |
継続雇用者に対する適用年度の給与等の支給額として政令で定める金額(*1)
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継続雇用者比較給与等支給額 |
継続雇用者に対する前事業年度等の給与等の支給額として政令で定める金額(*1)
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(*1)大綱では平均給与等支給額と記載されており、平均金額であることが予想される。詳細は政令を確認する必要がある。
現行法と同様の用語
雇用者給与等支給額 |
適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額
(給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額がある場合には当該金額を控除した金額)
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比較雇用者給与等支給額 |
適用年度開始の日の前日を含む事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者に対する給与等の支給額
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- 適用時期
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平成30年4月1日~平成33年3月31日の間に開始する事業年度に適用されます。