事業ポートフォリオとは?
メリットや作り方、活用のポイントを解説
変化の激しいビジネス環境で企業が成長を続けるには、限られた経営資源をどの事業に配分するかという戦略的な判断が欠かせません。その判断を支えるのが「事業ポートフォリオ」です。適切に構築された事業ポートフォリオは、経営の意思決定を後押しし、リスク分散や資源配分の最適化に役立ちます。本記事では、事業ポートフォリオの基礎知識からメリット、具体的な作り方、効果的な活用ポイントまでをわかりやすく解説していきます。
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事業ポートフォリオとは
事業ポートフォリオとは、企業が展開している複数の事業を整理し、それぞれの事業における収益性、成長性などを一覧化して可視化したものです。「ポートフォリオ」という言葉は本来「書類入れ」や「作品集」を意味しますが、ビジネスの世界では「組み合わせ」や「構成」といった意味で使われています。
事業ポートフォリオが対象とするのは、現在利益を生み出している事業はもちろん、将来的に収益が見込める事業もすべて含まれます。例えば、製造業なら製品ライン別に、サービス業ならサービス領域別に事業を分類し、それぞれの特性や市場での立ち位置を詳しく分析していきます。
経済産業省は、「事業再編実務指針」において、企業の持続的成長のために事業ポートフォリオの活用を推奨しています。
参考:事業再編実務指針|経済産業省
事業ポートフォリオ作成のメリット
事業ポートフォリオの作成によって、次のメリットが得られます。
経営判断の迅速化
事業ポートフォリオを作成することで、複数の事業を俯瞰的に把握できるようになります。各事業の収益性、成長性、市場でのポジションが一目でわかるため、経営陣は迅速かつ的確な判断を下すことが可能になります。予期せぬ事態が発生した際も、影響を受ける事業と影響の少ない事業を素早く把握し、適切な対応策を立てられます。
経営判断に必要な分析手法については、「経営分析の5つの手法や見るべき指標、効率的に行うポイントまで解説!」で詳しく解説しています。
リスク分散
複数の事業を適切に組み合わせることで、特定の市場の縮小や不況の影響を他の事業でカバーできるリスク分散効果が得られます。例えば、景気敏感な事業と景気に左右されにくい事業(食品・日用品など)を組み合わせれば、景気変動の影響を和らげられるでしょう。国内事業と海外事業のバランスを取ることで、地政学的リスクを分散することも可能です。
また、限られた経営資源を最も効果的な事業に集中させ、成長事業への投資と不採算事業の整理を戦略的に行うことも可能です。
M&Aや事業再編への活用
M&Aや事業再編を検討する際には、事業ポートフォリオが重要な判断材料となります。
あらかじめ「買収候補として育成すべき事業」と「撤退候補となり得る事業」を整理しておくことで、統合後の資源配分シナリオを描きやすくなります。
また、自社の事業構成を明確に把握していれば、買収対象の選定や売却事業の特定がスムーズに進みます。さらに、統合によるシナジー効果の見極めや、重複機能の統廃合を通じたコスト削減・競争力強化も期待できるでしょう。
グループ内での再編でも、事業の統合・分離を検討する際の客観的な根拠として活用でき、意思決定のスピードと精度が高まります。
事業ポートフォリオの作り方
事業ポートフォリオを作成する際には、複数の事業を整理・評価し、資源をどこに集中させるかを判断する必要があります。ここでは、代表的な分析手法を活用しながら、実務での進め方を解説します。
1. 現状を分析する
まずは、自社の現状を客観的に把握します。そのために広く活用されているのがPPM分析(Product Portfolio Management:プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)です。市場成長率と市場シェアという2つの軸で事業を4つに分類することで、どの事業が成長の柱となり、どの事業が見直しの対象になるのかを整理できます。4つの分類は、以下の通りです。
- 花形(スター)
高成長市場でシェアも高いため、将来の収益源として期待される事業です。ただし競争が激しく、継続的な投資が欠かせません。
- 問題児(クエスチョンマーク)
市場成長率は高いが市場シェアが低い事業を指します。積極的な投資により花形に育成するか、早期撤退するかの重要な判断が求められるでしょう。
- 金のなる木(キャッシュカウ)
市場の成長は鈍化しているものの高いシェアを持ち、安定した収益を生み出す事業です。この収益は他の事業への投資に活用できます。
- 負け犬(ドッグ)
市場成長率もシェアも低いため、撤退の検討が基本となります。ただし、他事業の収益を支える補完機能がある場合は、規模縮小・ニッチ集中で維持する選択肢も検討します。
2. メインの事業を決定する
PPM分析の結果を踏まえ、自社が最も競争優位を発揮できる事業領域を特定し、経営資源を集中すべきメイン事業を決定します。その判断に有効なのがCFT分析です。
CFT分析では、顧客軸(Customer)、機能軸(Function)、技術軸(Technology)の3つの視点から事業を整理します。単に市場規模や成長性だけでなく、自社が競争優位を発揮できる事業を特定するために行います。
- 顧客軸: どのような顧客セグメントをターゲットとするか
- 機能軸: 顧客にどのような価値を提供するか
- 技術軸: どのような技術やノウハウを活用するか
3. 自社の強みを明確にする
メイン事業が決まったら、その事業をさらに深掘りするために、SWOT分析を実施します。この分析は、強みを生かして機会をとらえ、弱みや脅威に対応する戦略を検討するために行います。
- 強み(Strengths): 他社にない技術力やブランド力、顧客基盤を把握します。
- 弱み(Weaknesses): 改善が必要な部分や競合に劣る要素を確認します。
- 機会(Opportunities): 市場の成長や新しいニーズ、技術革新を検討します。
- 脅威(Threats): 競合の参入や規制の変更、技術リスクを考慮します。
4. ビジネスモデルを設定する
分析結果を統合し、事業ポートフォリオ全体のビジネスモデルを設計します。この段階では短期的な収益性だけではなく、企業理念や長期的なビジョンとの整合性を確認する必要があります。
事業ポートフォリオを活用するポイント
事業ポートフォリオは一度作成して終わりではありません。ここでは、効果的に活用するための具体的なポイントを解説します。
定期的な見直し
事業ポートフォリオは市場環境の変化に応じて定期的に見直すことが大切です。見直しを怠ると、成長機会を逃したり、不採算事業への投資が長期化したりするリスクが高まります。
見直しの際は、各事業の業績だけでなく、市場の成長性や競合状況の変化も併せて評価し、必要に応じて事業の位置づけを修正しましょう。
事業の業績管理については、「業績管理のポイントと流れ!KPI・KGIやPDCAサイクルなどが重要」で詳しく解説しています。
データ活用体制の整備
事業ポートフォリオの継続的な運用には、現場の情報を正確かつタイムリーに集計し経営データとして活用できる体制づくりが欠かせません。経営層が全体像を把握できるよう、全社のデータを一元管理できるシステムやツールの活用が効果的です。また、各事業部門の担当者がデータ入力や更新を適切に行えるよう、運用ルールの明確化も重要となります。
データを活用した経営判断については、「データドリブン経営とは?メリットや実現のステップを解説」で詳しく解説しています。
事業ポートフォリオは定期的な見直しとデータ活用が必要
事業ポートフォリオは、適切な設定と運用によって、企業が持続的に成長するための意思決定をサポートし、資源配分の最適化やリスク分散を可能にします。まずは自社の現状を分析し、各事業を評価したうえで、自社に合った事業ポートフォリオを構築することから始めましょう。
事業ポートフォリオを効果的に活用するためには、正確なデータに基づいた分析と、各事業の業績や市場情報を継続的に収集・更新できる体制を整えることが欠かせません。
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