• 2023. 08. 25
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予実管理とは?必要性や手順、成功のためのポイント、
注意点まで徹底解説

予実管理とは?必要性や手順、成功のためのポイント、注意点まで徹底解説

企業が経営目標を達成するためには、予算と実績を比較し、数値の差異を分析する必要があります。この際に用いられる手法が「予実管理」です。予実管理によって経営目標の達成度や経営活動の課題が明らかになるため、健全な企業経営のためには欠かせない存在だといえるでしょう。

本記事では、予実管理の概要や目的・必要性から、具体的な手順や成功させるためのポイント・注意点まで幅広く解説します。

目次

予実管理とは

予実管理とは、企業の予算と実績を比較し差異分析を行うことです。

「予算を達成できそうにない」「途中までは調子が良かったのに、最終的に予算に届かなかった」といったような漠然とした感覚ではなく、何がどの程度足りていないか、多くの商材のうち改善すべきはどれかといったところまで自社の経営状況を数値で具体的に把握できるのが大きな特徴です。

分析によって目標値と実績とのズレや予算達成のための課題を定量的に分析できるため、適宜、改善策が講じられます。また、予算を下回った場合の要因と上回る成果を上げた際の成功要因も判明しやすいため、今後の改善・発展に役立てることも可能です。

一般的には、Excelや予実管理ツール、SFA(企業の営業活動で得た情報を管理・分析するツール)などを用いて管理することが多いでしょう。

予実管理の目的や必要性

予実管理の目的は、実績が目標(予算)どおりに達成しているかを確認し、未達だった場合にその要因と対策を講じることにあります。

また、経営目標(予算)の作成や達成度を把握することは、経営資源の調達や再分配を考える重要情報となります。経営管理に必要とされる機能には、「プランニング / コントロール / モニタリング / コーディネート」などが挙げられますが、予実管理は、このうちのモニタリング機能の役割を果たすものです。

さらに、予実管理比較表は上場企業が業績予想を開示するために証券取引所に提出する資料のひとつとなっていることから、予実管理は企業活動において非常に重要な業務であるといえるでしょう。

予算管理との違い

予実管理と非常に似ている言葉に、予算管理があります。予算管理は、一般的には「企業が事業年度ごとに策定する予算計画」を指します。

予実管理は予算管理のプロセスに含まれる業務のひとつであり、ほぼ同義として用いられることが多いものですが、厳密にいうと、目的・役割の面で以下のような違いがあります。

予算管理

企業全体での目標や人材・物資・経費の効率的配分を考える

予実管理

経営活動の課題を明確化し、健全な経営を支える

予実管理の手順

ここからは、実際に予実管理を行う際の流れを確認していきましょう。手順は、以下の3ステップです。

ステップ1. 予算目標の設定

まずは、目標や経営戦略に基づいて、予算の目標を定めます。ここで重要なのは、「適切な目標を立てること」で、簡単には達成できないが、努力をすれば実現可能な程度に設定することが大切です。

予算目標は、高すぎても低すぎても適切とはいえません。高すぎると、従業員のモチベーションが低下し、比較・分析を行う意味がなくなってしまうおそれがあります。反対に低すぎると、企業としての成長が望めないでしょう。

ステップ2. 予算の設定

次に、予算を設定します。この際には過去の実績を参考にしますが、繁忙期と閑散期の差が大きい業種の場合は、その事実を踏まえる必要があるでしょう。加えて、将来的な見通しも重要です。例えばすでに予定している売上の状況・仕入れやコスト増減、設備投資の必要性など、多角的な情報を考慮しながら決めていきます。

ステップ3. 月次チェック・予算と実績の比較・軌道修正

予算が決まれば、実績との差を任意の期間ごとに確認します。予算と実績は、月ごとにチェックし、比較・軌道修正するのが理想的です。一回の確認期間が短いほど、詳細な分析が可能となります。

予算と実績にズレがある場合は、原因を分析して軌道修正を検討しましょう。どれだけ売上が高くても経費が多ければ赤字であるため、分析の際には、売上額ではなく販売費および一般管理費(販管費)を差し引いた営業利益に着目することがポイントです。

予実管理を成功させる4つのポイント

ここでは、予実管理を成功させるために覚えておきたいポイントを紹介します。ポイントは、主に4つです。

1. 頻繁に、かつ定期的に分析する

タイムリーに軌道修正を行うためには、頻繁で定期的な分析が必要です。予算と実績の乖離を早期に発見できなければ、対応が遅れて損失が大きくなっていきます。

月次チェックが一般的ではあるものの、状況の変化が大きい時期や分野においては、より頻繁な分析の実施が望ましいでしょう。

2. PDCAサイクルを実践する

予算と実績の差を埋めるには、PDCAサイクル(Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)、Action(改善))の実践が有効です。繰り返し実践することで予算設定の精度が高まり、課題の早期解決が期待できます。

予実管理でいえば、設定した予算(Plan)に向けて行動を起こし(Do)、定期的に予算数値と実績数値を比較して達成度合いを分析(Check)します。そして、分析結果から明らかになった課題を検証して、改善策を実施(Action)する流れをスムーズに実行できる仕組みづくりが必要です。

3. 部門ごとにKPIを設定しておく

KPI(Key Performance Indicator 重要業績評価指標)とは、企業や組織が目標を達成するために設定される、各プロセスにおける具体的な行動指標のことです。部門ごとに企業目標と連動したKPIを設定しておくと、目標達成のためにとるべき行動や上げるべき成果の目安が明確になるため、予実管理をより効果的に活用しやすくなります。

4. より効率的に分析できる環境を整える

短期間で分析できれば、それだけ早く問題を発見し、対応できるわけです。そのためには、集計・分析作業が簡単に早くできる環境を整えることも大切だといえるでしょう。

部署によってデータの管理・収集方法が異なっていると集計に時間がかかってしまうため、ツールやフォーマットは統一するのがおすすめです。効率性を考えると、予実管理に長けたシステムやツールの導入も推奨されます。

予実管理を行う際の注意点

予実管理を効果的に活用するためには、事前に理解しておきたい注意点もあります。ここでしっかりと確認しておきましょう。

優先順位を明確にする

予実管理では、あらかじめ予算に重要度を設定し、優先順位をつけておくことが推奨されます。なぜなら、どの要素においても差異が生じることがほとんどであるためです。

その際、予算と実績の差異が小さい要素と大きい要素が出てくるでしょう。すべての差異に対処していては、リソースが不足してしまう可能性が高いです。重要度の低い差異にとらわれていることで、本当に解決すべき問題に十分に向き合えないかもしれません。事前に優先順位をつけ、まずは重要度の高い要素から対策できるようにしましょう。

目標にこだわりすぎない

予算目標を達成するか否かは重要な問題ではありますが、未達成の場合も差異分析をして要因と対策を講じることが重要点です。目標の達成だけにこだわり、無理をしてはいけません。従業員が疲弊してしまいますし、場合によっては予算さえ達成すればいい、といった誤った企業体質に染まる可能性があります。そのような状態に陥ってしまうと、目標達成のために売上を不当に膨らませるといった財務上の不正行為への懸念が生じます。

予算と実績があまりにも合わない場合は、そもそも設定した予算が現実的ではない可能性も考えられます。今一度、冷静に状況を踏まえて目標設定から見直してみるとよいかもしれません。

予実管理を経営目標の達成に生かそう

予実管理は、自社の予算と実績を定量的に分析・管理できる手法で、迅速な経営改善や経営判断に非常に役立つものです。効果を最大限に発揮し、迅速に活かすためには、短期間かつ定期的な実施が欠かせません。

予実管理に特化したシステムやツールを活用すれば、スピーディで精度の高い分析が実現します。適切な予実管理で自社のさらなる発展を目指すために、ぜひこの機会に導入を検討してみてください。