• 2023. 09. 21
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予算策定の重要性って?
流れと効果的に進めるポイントを解説

予算策定の重要性って?流れと効果的に進めるポイントを解説

予算策定とは、予算管理のもととなる予算を決めることで、企業方針の要(かなめ)となる重要なプロセスです。予算策定を行うことで、企業運営の効率化や迅速な意思決定が実現しやすくなるうえ、リスク管理にも役立ちます。一方で、予算管理との違いがわからない担当者もいるかもしれません。本記事では、企業の競争力を強化できる、予算策定について詳しく解説します。

目次

予算策定とは

予算策定とは、予算管理の基礎となる「売上」と「経費」の予算を決めることです。企業方針の決定や資産配分などの基礎にもなることから、企業経営では非常に重要な課程だといえるでしょう。予算策定では、売上と経費に計上する経費を、年間の利益目標から逆算して決定します。利益目標は、前年度までの売上と経費のバランスを考慮したうえで、具体的な根拠を持って決めなければなりません。

予算策定で決定した具体的な数値目標を従業員間で共有することで、全社として向かうべきゴールが明確になります。

予算管理との違いは?

予算管理は、予算策定した計画や目標に沿って実際の収入と支出を管理・監視することで、年間を通じて実行されます。予算管理では、利益目標との差異を鑑みて調整や改善を行います。つまり、予算策定は予算管理の基礎となるプロセスであると捉えるとわかりやすいでしょう。

予算策定のタイプ

予算策定には、トップダウン方式とボトムアップ方式の2種類のタイプが存在します。

トップダウン方式

トップダウン方式は、全体的なビジョンや戦略をもとに経営陣が予算を立てる手法で、スピード感があるのが特徴です。一方で、現場の意見が反映されにくいのが難点で、ともすると無理な予算策定になる場合があります。慎重に策定しないと従業員のモチベーション低下につながる可能性もあります。

ボトムアップ方式

ボトムアップ方式は、現場レベルでの情報をもとに予算を立てる手法で、現場の人材の声を反映でき、従業員のモチベーション向上につながりやすいのが特徴です。ただし、現場の声に耳を傾ける分、予算策定をまとめるのに時間がかかる傾向にあります。


それぞれにメリット・デメリットが存在することから、トップダウン方式とボトムアップ方式のどちらか一方を採用するのではなく、自社に必要な内容を選択しながら併用することがおすすめです。互いのメリットを生かし、デメリットを補い合うのが理想的でしょう。

予算策定が重要な3つの理由

予算策定は、主に以下の3つの理由から企業にとって重要なものだと考えられています。それぞれ詳しく解説します。

効率的な経営改善が期待できるため

予算策定では、あらかじめ1年間のお金の使いみちを想定するため、自社にとって重要度の高い項目に優先的に支出を割り振ることが可能です。限られた資金を適切な予算計画に沿って活用できれば、経営改善と安定につながります。

経営リスクに対処しやすくなるため

予算策定では、今後の経済的状況や市場環境に対する予測も行います。その際には、今後起こりえるリスクも考慮するため、予算策定を実施することがそのままリスク回避につながります。万が一、問題に直面しても、事前の想定があれば経営への影響を最小限に抑えられるでしょう。

迅速な意思決定につながるため

予算策定を行うと、企業全体の目標が共有されます。やるべきことも明確化されるため、経営陣においても現場においても意思決定がスピーディーに行えるようになるでしょう。また、経営陣の発した意思決定が社内でスムーズに共有されるという効果も生じます。

さらに、何が重要情報であるかも共有されるため、優先順位の高い情報がいち早く伝達されるようにもなります。

予算策定の具体的な流れと実施時期

予算策定の正しいフローをあらかじめ知っておくと、実務に取り組む際にスムーズに進められます。具体的な流れを理解しておきましょう。

予算策定の流れ

予算策定は、以下の流れで進行します。

1.予算策定の方針を決定する

まず、企業全体として目指すゴール(経営戦略や利益目標)を決めることから始めます。具体的なゴールが定まれば、適切な予算内容も見定められます。

2.部門ごとに予算を決める

全社的な方針が決定したら、そのゴールに到達するために必要な予算を部門ごとに算出します。これは、現場の事情や状況に精通する各部門の責任者が行うのが理想です。 ここで細かな固定資産や人件費を計算するため、リソースの割り振りや削減といった見直しを図るよい機会になります。

3.全体の予算を調整し、決定する

各部門の予算が出そろったら、とりまとめて総合予算の策定に着手します。予算編成部門が主体となり、全社を通して状況を見ながら予算やリソースの配分を調整し、全体の予算を検討する段階です。

目標と予算との乖離を防ぐためには、明確な根拠がある戦略や目標をもとにして予算決めを行う必要があります。

4.全体予算と利益目標を比較・調整する

全体予算が決定したら、最初に立てた利益目標と比較しながら細かな調整を行います。全体の予算を最終決定する、いわば予算策定の大詰めともいえる段階にあたるため、目標や部門間とのすり合わせは慎重に行わなければなりません。

「売上目標を増やす」「費用を減らす」「数値の妥当性を検証する」などの方法で調整するのが一般的です。決まったやり方はありませんが、客観的に納得できる方法をとることが重要です。

5.予算や目標値を共有し実行する

最終決定した予算案は、取締役会で承認を受けたあとに各部門に通知します。全社として足並みをそろえて計画的に実行するためには、情報の共有も欠かせません。

計画を立てただけで満足してしまい、適切に運用されなければ策定する意味がありません。目標や予算を全体で共有・調整しながら、計画的に実行することが大切です。

予算策定の時期

予算策定の時期に関するルールは特に設けられてはいないものの、決算の前月には終わっているのが一般的です。そこから逆算して考えると、決算の2~3カ月前には予算策定に着手できると安心でしょう。

予算策定で押さえておきたいポイント

最後に、予算策定を効率的に進めるコツを押さえておきましょう。ポイントは以下の3点です。

策定した予算は具体的で実現可能なものか

予算策定では、過去の実績や統計データを参考にして目標を設定しますが、その際には、企業の経営戦略やビジョンとの整合性が求められます。経営戦略を実現するために必要だと感じられる具体的な目標を設定することが重要です。

また、忘れてならないのは、目標を現実的かつ達成可能な範囲内で設定することです。これらの要件を満たすことで、社内の意欲向上も見込めるでしょう。

予算策定・管理には業務担当者がかかわっているか

現場の実情をよく理解していない人が部門別の予算を策定した場合、業務内容や課題を把握できていないことから、表面的な数字になってしまいがちです。例えば、市場動向や原材料費の上昇、現場従業員の異動といった複数の要因が予算策定では重要になります。業務担当者がかかわり現状に即した数字を挙げることで、現実的な策定案が上がりやすくなります。

予算策定後も継続して確認・見直しを行うこと

予算策定後の定点観測は、目標の達成状況を把握することであり、予実管理と同義です。必要に応じて迅速に対策を講じるために欠かせない重要な要素であるため、予算を策定したのちも継続して確認・見直しを行うことが肝心です。

予算策定の実施で運営の効率化を図ろう

あらかじめ次期の予算について方向性を決める予算策定は、企業運営の効率化が図れる、迅速な経営判断やリスク管理ができるといった効果も得られます。また、現実的で企業のビジョンに合った予算策定ができれば、従業員のモチベーション向上も期待できるでしょう。組織力強化のためにも、予算策定に積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。