- 2026. 02. 13
- 会計   
- 税制改正
令和6年度 税制改正のポイント
デロイト トーマツ税理士法人
望月 伸彦 / 田形 俊輔 / 木村 あゆ美
1. はじめに
皆様、こんにちは。デロイト トーマツ税理士法人です。今回は令和6年度の税制改正について解説いたします。
今回の税制改正では、デフレからの脱却を目指し、物価上昇を上回る賃金上昇の実現が最優先とされ、所得税・個人住民税の定額減税、賃上げ促進税制の強化等が行われました。
このコラムでは、改正内容のうち特に読者の皆様に関連があり重要と思われる内容を、図や表を織り交ぜてできるだけわかりやすく説明いたします。税制改正に対する読者の皆様のご理解の一助となれば幸いです。
2. 令和6年度 税制改正のポイント
今回の法人関連の税制改正では、物価上昇を上回る賃金上昇を実現すべくいわゆる「賃上げ税制」について見直しが行われました。
また、研究開発税制や外形標準課税についても見直しが行われました。
消費税は、令和5年10月より開始したインボイス制度に関連する改正が行われました。
令和6年度税制改正の俯瞰図
- <目次>
-
- (1) 給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度
- (2) 特定税額控除規定の停止措置の見直しと延長
- (3) 研究開発税制の見直し
- (4) 交際費等の損金不算入制度の見直しと延長
- (5) 外形標準課税の見直し
- (6) 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の見直しと期限延長
- (7) インボイス制度に関連する改正
(1) 給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度
構造的・持続的な賃金上昇の動きを拡げることを目的として、企業の規模に応じた賃上げ率の要件を設定し、賃上げ率の増加等に応じて控除率を増加させることにより企業の賃上げをさらに促進する見直しが行われました。
また、子育てと仕事の両立支援や女性活躍の推進に積極的な企業に対する厚生労働者による認定を受けている企業に対して控除率の上乗せ措置を講ずることにより、
最大の控除率が、大企業・中堅企業では現行の30%から35%に、中小企業では現行の40%から45%に引き上げられることになりました。
さらに、中小企業の多くが欠損法人であり、欠損法人に対して税制措置のインセンティブが有効となっていない現状を考慮して、中小企業に対して新たに繰越税額控除制度が創設されました。
① 全法人向けの措置
概要
賃上げ促進税制は、継続雇用者に対する給与等支給額が前事業年度と比べて3%以上増加している場合等に、その増加額(控除対象雇用者給与等支給増加額)の一部を法人税から税額控除できる制度です。
今回の改正では、企業規模に応じて賃上げ率の要件・税額控除率が見直され、適用期限が3年延長されました。
| 区分 |
賃上げ要件を 満たす場合 |
教育訓練要件を 満たす場合 |
女性活躍・子育て支援要件を 満たす場合 |
合計控除率 |
| 大企業 |
継続雇用者給与等支給額(前期比) |
税額控除率(原則) |
加算 |
加算 |
加算 |
合計 |
| +3% |
10% |
- |
+5% |
+5% |
20% |
| +4% |
+5% |
25% |
| +5% |
+10% |
30% |
| +7% |
+15% |
35% |
| 中堅企業 |
継続雇用者給与等支給額(前期比) |
税額控除率(原則) |
加算 |
加算 |
加算 |
合計 |
| +3% |
10% |
- |
+5% |
+5% |
20% |
| +4% |
+15% |
35% |
| 中小企業 |
継続雇用者給与等支給額(前期比) |
税額控除率(原則) |
加算 |
加算 |
加算 |
合計 |
| +1.5% |
15% |
- |
+10% |
+5% |
30% |
| +2.5% |
+15% |
45% |
| 項目 |
改正前 |
改正後 |
税額控除率 |
原則
|
継続雇用者給与等支給額≧
前期継続雇用者給与等支給額×103%
|
控除対象雇用者給与等支給増加額×税額控除率15%
|
継続雇用者給与等支給額≧
前期継続雇用者給与等支給額×103%
|
控除対象雇用者給与等支給増加額×税額控除率10%
|
上乗せ① 賃上げ要件 |
継続雇用者給与等支給額≧
前期継続雇用者給与等支給額×104%
|
税額控除率に10%加算
|
継続雇用者給与等支給額≧
前期継続雇用者給与等支給額×104%
|
税額控除率に5%加算 |
継続雇用者給与等支給額≧
前期継続雇用者給与等支給額×105%
|
税額控除率に10%加算 |
継続雇用者給与等支給額≧
前期継続雇用者給与等支給額×107%
|
税額控除率に15%加算 |
上乗せ② 教育訓練要件 |
教育訓練費の額≧
前期教育訓練費の額×120%
|
税額控除率に5%加算 |
教育訓練費の額≧
前期教育訓練費の額×110%、かつ、
教育訓練費の額≧雇用者給与等支給額×0.05%
|
税額控除率に5%加算 |
上乗せ③ 女性活躍・子育て支援 |
- |
プラチナくるみん又はプラチナえるぼし認定 |
税額控除率に5%加算 |
プラチナくるみん
次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、
厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができます。
このくるみん認定を受けた企業のうち、相当程度両立支援の制度の導入や利用が進み、高い水準の取組を行っている等の一定の要件を満たした場合に認定されるのが、プラチナくるみん認定です。
プラチナえるぼし
一般事業主行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良である等の一定の要件を満たした場合に、厚生労働大臣の認定(えるぼし認定)を受けることができます。
このえるぼし認定を受けた企業のうち、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取組の実施状況が特に優良である等の一定の要件を満たした場合に認定されるのが、プラチナえるぼし認定です。
マルチステークホルダー要件の見直し
| 項目 |
改正後 |
| マルチステークホルダー要件*1の見直し |
- 常時使用する従業員数が2,000人を超える法人が加えられた
- 消費税の免税事業者との適切な関係の構築方針について記載(取引先に消費税の免税事業者が含まれること)が求められることとなった
|
*1:資本金の額等が10億円以上かつ常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合には「給与等の支給額の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針その他の事項」
(いわゆるマルチステークホルダー方針)を公表しなければならないこととされた
② 従業員数2,000人以下の青色申告書提出法人についての制度
| 項目 |
改正後 |
| 対象法人 |
- 青色申告書提出法人で常時使用する従業員数が2,000人以下
- その法人及びその法人との間にその法人による支配関係がある法人の常時使用する従業員の数の合計数が1万人を超えるものを除く
|
| 対象事業年度 |
- 令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度
|
| 適用要件 |
- 継続雇用者給与等支給額≧前期継続雇用者給与等支給額×103%
- 資本金の額等が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合は、マルチステークホルダー方針をインターネットを利用する方法により公表したことを経済産業大臣に届け出る
|
| 税額控除の内容 |
- 控除対象雇用者給与等支給増加額×税額控除率10%
- 当期法人税額の20%上限
|
| 税額控除率の加算措置 |
- 継続雇用者給与等支給額≧前期継続雇用者給与等支給額×104%
|
税額控除率に15%加算 |
- 教育訓練費の額≧前期教育訓練費の額×110%、かつ、教育訓練費の額≧雇用者給与等支給額×0.05%
|
税額控除率に5%加算 |
- プラチナくるみん若しくはプラチナえるぼし又はえるぼし認定(3段階目)
|
税額控除率に5%加算 |
③ 中小企業者向けの措置
前述のくるみん認定、えるぼし認定が上乗せ要件に加わり、女性活躍や子育て支援を推進した企業の税額控除率が増加することになりました。
| 項目 |
改正前 |
改正後 |
税額控除率 |
原則
|
雇用者給与等支給額≧
前期雇用者給与等支給額×101.5%
|
控除対象雇用者給与等支給増加額×税額控除率15%
|
雇用者給与等支給額≧
前期雇用者給与等支給額×101.5%
|
(改正なし 15%) |
上乗せ① 賃上げ要件 |
雇用者給与等支給額≧
前期雇用者給与等支給額×102.5%
|
税額控除率に15%加算
|
雇用者給与等支給額≧
前期雇用者給与等支給額×102.5%
|
(改正なし 15%) |
上乗せ② 教育訓練要件 |
教育訓練費の額≧
前期教育訓練費の額×110%
|
税額控除率に10%加算 |
教育訓練費の額≧前期教育訓練費の額×105%、かつ、教育訓練費の額≧雇用者給与等支給額×0.05%
|
税額控除率に10%加算 |
上乗せ③ 女性活躍・子育て支援 |
- |
プラチナくるみん若しくはプラチナえるぼし又はくるみん若しくはえるぼし認定(2段階目以上) |
税額控除率に5%加算 |
| 繰越税額控除制度 |
制度なし(控除限度超過額は、繰越不可) |
- 控除限度超過額は5年間繰越し
- 繰越税額控除をする事業年度において、雇用者給与等支給額>前期雇用者給与等支給額
|
④ 事業税付加価値割についての措置
上述の法人税における賃上げ促進税制の見直しに合わせ、法人事業税付加価値割についても、同税制の見直し後の要件と同様の要件を満たす法人に対して、以下の措置がとられました。
-
法人が令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、
継続雇用者給与等支給額の前期の継続雇用者給与等支給額に対する増加割合が3%以上である等の要件を満たすときは、控除対象雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除できることとされました。
-
外形標準課税の対象法人の見直しに伴い、中小企業者等が令和7年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において、
雇用者給与等支給額の前期雇用者給与等支給額に対する増加割合が1.5%以上である等の要件を満たすときは、控除対象雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除する制度が設けられました。
⑤ その他
その他、給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」から、看護職員処遇改善評価料及び介護職員処遇改善加算その他の役務の提供の対価の額が除外されました。