• 2023. 09. 21
  • 経営管理   
  • 業務改善・業務効率

アメーバ経営とは?
特徴や導入プロセス、メリット・デメリットを解説

アメーバ経営とは?特徴や導入プロセス、メリット・デメリットを解説

アメーバ経営とは、会社組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団に分け、小さな組織(アメーバ)単位が経営者意識を持って活動していく経営手法です。全社員が経営に参加する意識を持つことが大きな目的で、それによって、組織全体の意識・成果向上を図ります。小さな単位の各組織が独自の目標を追求し、収益と費用を管理することで、迅速な意思決定が可能です。また、経営者の視点を持った人材の育成にもつながります。本記事では、アメーバ経営の特徴やメリット・デメリットについて解説します。

目次

アメーバ経営とは

アメーバ経営を提唱したのは、京セラ株式会社の創業者であり名誉会長でもある稲盛和夫氏です。同氏が1970年代に導入したこの経営手法は、企業内での自己経営の文化を根付かせ、組織全体の効率と柔軟性を高めることを目的としています。同氏のアメーバ経営の考え方は、多くの企業に影響を与え、日本国内外で広く注目を浴びました。

同氏によると、アメーバ経営の目的は以下の3つです。

  • 全員参加経営の実現
  • 経営者意識を持つ人材の育成
  • 市場に直結した部門別採算制度の確立

このような目的を持つアメーバ経営について、次章以降で詳しく解説します。

アメーバ経営のメリット、デメリット

アメーバ経営のメリットは、迅速な意思決定と柔軟性を促進し、各アメーバの自主性が組織全体の成果向上に寄与することです。情報共有により連携を強化し、透明性を高める、リーダーシップを育成できる、定期的な評価で改善を推進できるなどのメリットがあります。

一方で、コミュニケーションの調整や全体最適と個別最適のバランスの難しさがデメリットといえるでしょう。競争と協力の調和や組織文化の変革が課題となり、適切な導入と運用が求められます。

アメーバ経営のメリットとデメリットについて、項目を挙げて解説します。

アメーバ経営のメリット

迅速な意思決定と柔軟性

アメーバ経営は小さな組織単位に責任を委譲するため、組織内での意思決定が迅速に行われます。これによって変化への適応力が高まり、市場の変動に柔軟に対応できます。

経営意欲と自主性の促進

各アメーバがリーダーを中心に組織の管理と経営を行うため、組織メンバーの意欲が高まります。目標達成に向けて一人ひとりの責任感が増すことから、生産性の向上が見込めます。

責任分散とリーダーシップの育成

アメーバごとに責任が分散されるため、組織内でのリーダーシップ能力を育成できます。また、組織内で幅広い人材がリーダーシップを発揮できる環境が生まれます。リーダーが生まれ続ければ、長期的な経営の安定と成長が期待できます。

小集団(アメーバ)内における高い透明性と情報共有

アメーバ内では情報共有が重視され、組織内の透明性が高まります。アメーバ内の状況を把握しやすくなり、メンバー間の連携がスムーズに行われることで、各アメーバの生産性向上が見込めます。

アメーバ経営のデメリット

全体最適と個別最適のバランス

各アメーバが自己目標を持つため、全体の最適解と個別の最適解のバランスをとることが難しい場合があります。

競争と協力の矛盾

アメーバ同士の競争が活性化する一方で、組織内の協力が薄れる可能性もあります。セクショナリズムが発生すると、企業の競争力がそがれます。

文化の変革の難しさ

従来の組織文化からアメーバ経営への転換には時間と努力が必要です。組織全体の文化変革が課題となることがあります。中途半端な改革で終わってしまうと、企業としての求心力を失う懸念があります。


アメーバ経営は、その特性から、組織の状況や目標によってメリットとデメリットが異なります。適切な導入と運用が求められます。

アメーバ経営を導入する際のプロセス

アメーバ経営を導入するには、まず経営陣が概念を理解し、意義を共有することからスタートします。そのうえで、各部門をアメーバに分割し、目標を設定します。いきなり全社で導入するのではなく、徐々に展開させていくスモールスタートがよいでしょう。進捗状況や課題を見極めつつ、組織全体で文化を確立させていきます。柔軟な組織の構築を進めることで、成功率を高めることができるでしょう。

アメーバ経営を導入する際の一般的なプロセスは以下のとおりです。

1.理解と準備

経営陣と関係者がアメーバ経営の基本概念を理解し、その導入の意義や目的を共有します。それに伴って組織内の文化変革を準備し、アメーバ経営を推進することを社内外に周知します。社内でどのようなリーダーシップが必要かを定義することで、理念を個々の意識改革へと落とし込むことも重要です。

2.アメーバ(小集団)の設立と目標設定

各部門やチームをアメーバとして分割し、それぞれに管理と経営を委任します。各アメーバは独自の目標を設定し、目標達成度を図るための具体的な指標を定めます。短期的な目標と長期的な目標を設定することが一般的です。

3.収益・費用の計測と管理

各アメーバは収益と費用を明確に計測し、バランスをとりながら目標達成を目指します。自己収支の確保と成果を重視する考え方を丁寧に浸透させます。

4.情報共有と透明性の確保

アメーバ間での情報共有を強化し、各アメーバの進捗や課題を共有します。組織内の透明性が高まり、連携がスムーズに行われる環境を整えることも大切です。

5.リーダーシップの育成

アメーバ経営では、各アメーバのリーダーシップが重要です。リーダーシップの育成プログラムやサポート体制を整備し、経営のスキルを向上させます。

6.評価と改善

アメーバの成果を定期的に評価し、目標達成度や収益状況を振り返ります。必要に応じて課題を洗い出し、改善策を検討します。一度の評価で改善できるものではないので、長期的に評価できる体制を構築する必要があります。

7.展開と拡大

アメーバ経営の成功事例をもとに、ほかの部門やチームにも導入を拡大する段階に移ります。組織全体でのアメーバ経営の文化を確立する努力が続きます。


アメーバ経営の導入は、組織の特性や状況に応じて調整されなければなりません。スムーズな導入と運用を実現するためには、関係者への啓蒙とサポート、長期的な計画の策定が不可欠です。

アメーバ経営を運営するポイント

アメーバ経営の運営を成功に導くカギは、明確な目標設定と自己収支の意識です。各アメーバが具体的な目標と数値を持ち、自己管理で収益と費用のバランスを追求することが成果の基盤です。また、アメーバ経営を成功させるためのポイントはほかにもあります。

協力と競争の好バランス

アメーバ同士の競争は刺激となりますが、協力も同様に重要です。組織全体の目標達成のために、競争と協力のバランスをとることが必要です。人材育成や人事評価において双方の重要性を伝えましょう。

継続的な改善意識

アメーバ経営は変化に適応する柔軟さが求められます。具体的には、常に新たなアイデアやプロセスの改善を模索し、絶え間なく成長を追求します。そのためには、経営層は従業員のアイデアや声を積極的に取り入れていかなければなりません。自分たちの考えが組織を変えていく実感を持つことで、成長しつづける組織に近づけます。

リスク管理と安定性の確保

アメーバ経営では経営意欲と自主性が強調されますが、過度のリスクには注意が必要です。冒険や思いきりは成長の大事な要素ではありますが、冷静な視点で効果を見極めることが欠かせません。組織全体の安定性とリスク管理も考慮しましょう。


これらのポイントを踏まえながら、組織内でのアメーバ経営の運営を行うことで、成果向上と柔軟な組織の構築が可能です。

アメーバ経営では会社を小さな組織単位の集まりと考えることで
大きな成果につなげる

アメーバ経営は、京セラ株式会社の創業者稲盛和夫氏によって提唱された手法です。各部門をアメーバに見立て、小さな組織に分割し、組織単位の管理・経営を促進します。収益と費用のバランスを重視し、責任を分散させることで、素早い意思決定と柔軟な運営が可能になり、透明性と情報共有を通じて組織内の連携が強化し、目標達成に集中できます。アメーバ経営は、変化の激しい時代においても、持続的な成果を上げるために有効な手法のひとつです。導入を検討してみてはいかがでしょうか。