• 2025. 11.21
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原価計算とは?
目的や種類、手順、効率化できるシステムを解説

原価計算とは?目的や種類、手順、効率化できるシステムを解説

製品やサービスの適正な価格設定と利益確保において、コストの正確な把握は欠かせません。この重要な業務を担うのが「原価計算」です。本記事では、原価計算の基本から、目的・種類・計算方法までをわかりやすく解説します。

目次

原価計算とは

まずは原価計算の基本的な考え方と、その目的について確認しましょう。

原価計算の定義

原価計算とは、製品やサービスを提供するためにかかった費用を計算することです。材料費や現場社員の労務費といった直接費に加え、販管費や地代家賃など間接費も含まれます。

原価計算を行うことで、企業が想定していた理想の原価と実際の原価を比較し、コスト削減や工程の見直しに取り組めるようになります。さらに適正な価格設定や経営判断の根拠としても活用でき、企業経営において不可欠な業務といえるでしょう。

原価計算の5つの目的

1962年に策定された原価計算基準では、原価計算には以下の5つの目的があるとされています。

  1. 1.財務諸表目的 : 外部報告用の財務諸表を作成する
  2. 2.価格計算目的 : 製品の適正販売価格を決定する
  3. 3.原価管理目的 : 理想と実際の原価を比較し、コスト削減や効率化を図る
  4. 4.予算編成目的 : 将来の予算を策定するための計画資料を作成する
  5. 5.経営計画目的 : 外注の判断、設備投資の可否など経営判断の支援する

上記5つの目的を大別すると、1は利害関係者に財政状態を知らせる「財務会計目的」、2~5は自社の意思決定に活用される「管理会計目的」に分けられます。

財務会計と管理会計の違いについては、「財務会計と管理会計の相違点とは?目的や機能の違いをわかりやすく解説!」で詳しく解説しています。

原価の基本構造

原価計算を理解するうえで、原価がどのような構造になっているかを把握することは重要です。ここでは、原価の3要素とその分類について解説します。

原価の3要素

原価は「材料費」「労務費」「経費」の3つの要素に分類されます。

材料費

製品製造に使用する原材料や部品の購入費用を指します。主原料費、買入部品費、補助材料費、工場消耗品費などが含まれます。

労務費

製造業務に携わる従業員の人件費全般を指します。賃金、賞与、社会保険料、各種手当などが該当します。

経費

材料費・労務費以外のすべての費用です。減価償却費、光熱費、通信費、外注費、賃料などがこれにあたります。

直接費と間接費

原価の3要素はそれぞれ「直接費」と「間接費」に分けられます。

直接費

特定の製品だけに使われる費用で、製品ごとに正確に計算できるものを指します。

間接費

複数の製品に共通してかかる費用で、各製品への配分が必要になる費用です。

例えば、特定製品専用の材料は直接材料費、工場全体で使う機械油は間接材料費として分類されます。

変動費と固定費

原価は、生産量との関係から「変動費」と「固定費」という切り口でも分類できます。

変動費

生産量に比例して増減する費用です。原材料費や直接労務費が代表例です。

固定費

生産量に関係なく一定額発生する費用を指します。設備の減価償却費、工場の賃借料、管理者の給与などが該当します。

この分類は損益分岐点分析において重要な役割を果たします。

損益分岐点分析については、「損益分岐点分析とは?主要指標の計算方法や活用方法もわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

原価計算の種類

原価計算にはいくつかの手法があり、目的や企業の状況に応じて使い分けることが大切です。ここでは代表的な種類について解説します。

原価計算の種類

目的別原価計算

目的別原価計算は、経営管理や財務報告を目的として実施される計算方法です。費用の集計範囲によって「全部原価計算」と「部分原価計算」に大別されます。

全部原価計算では、材料費・労務費・経費のすべてを製品原価として計算します。標準原価計算と実際原価計算がこの手法にあたります。

一方、部分原価計算では変動費のみを製品原価とし、固定費は期間費用として別途管理します。直接原価計算が代表例といえるでしょう。

標準原価計算

標準原価計算とは、製品を製造する際の目標となる原価を事前に設定する方法です。

過去の実績データや市場調査、製造工程の分析に基づき、「理想的な条件下での原価」を算出します。事前に目標原価を設定することで予算策定や目標管理に活用でき、のちに実際原価との比較により改善点の特定が可能となります。

活用場面:新製品の価格設定、年間予算の策定、各部門の目標設定など

実際原価計算

実際原価計算とは、製品を製造した後に実際にかかった費用を集計する方法です。

材料費、労務費、経費のすべての実際発生額を正確に把握し、製品ごとの真の原価を算出します。実際に発生した費用を正確に集計するため財務諸表作成の基礎データとなり、標準原価との比較により問題点を発見することができます。

活用場面:月次決算、原価管理、標準原価の見直し検討など

直接原価計算

直接原価計算とは、変動費のみを製品原価として計算し、固定費は期間費用として別途管理する方法です。

製品の売上高から変動費を差し引いた「限界利益」を重視する考え方で、変動費のみを製品原価とすることで限界利益の把握が容易になります。

活用場面:製品別の収益性分析、受注可否の判断、最適生産量の決定など

生産形態別の分類

製品の生産方法に応じて、原価の算出方法も変わります。ここでは主要な2つの手法を紹介します。

個別原価計算

受注生産や特注品など、製品ごとに仕様が異なる場合に採用される手法です。プロジェクト単位で原価を集計します。

適用業界:建設業(建物・土木工事)、ソフトウェア開発業、コンサルティング業など

総合原価計算

同一製品を大量生産する場合に採用される手法です。一定期間の総製造費を生産量で割って単位原価を算出します。製品を継続的に大量生産する工場で用いられます。

適用業界:食品製造業、化学工業、鉄鋼業など

原価計算の手順

原価計算は、次の3つのステップで実施します。

手順1 : 費目別原価計算

原価を材料費、労務費、経費の3要素に分類し、それぞれを直接費と間接費に分けて集計します。

手順2 : 部門別原価計算

費目別原価計算で算出した間接費を各部門に配賦します。材料であれば使用量、光熱費であれば各部門の専有面積など、費目ごとに適切な配賦基準を用いて間接費を部門別に割り振ります。

手順3 : 製品別原価計算

費目別原価計算で算出した直接費と、部門別に配賦済みの間接費を合わせて製品ごとの原価を算出します。各製品の仕様と数量を考慮して、製品の種類ごとに原価を按分する必要があります。このステップにより、最終的に各製品にかかった正確な原価が明らかになります。

原価計算を効率化できるシステム・ツール

材料費や労務費などの原価要素が多岐にわたる場合、手作業やExcelでは限界があります。集計ミスやタイムロスを防ぎ、原価計算を効率的かつ正確に行うには、適切なシステムの導入が欠かせません。原価計算を支援するシステムには、以下のような選択肢があります。

原価計算システム

原価計算に特化したシステムは、製品ごとの原価集計や部門別・工程別の分析機能が充実しています。標準原価と実際原価の差異分析、配賦計算、差異要因のレポートなど、管理会計に必要な要素が揃っているのが特徴です。製造業、建設業、サービス業など、業種特有の原価計算ルールに対応した製品もあります。

ERP(統合基幹業務システム)

ERP(Enterprise Resource Planning)は、会計・人事・在庫・生産などを一元管理できるシステムで、原価管理機能を含むこともあります。各部門のデータがリアルタイムで連携されるため、企業全体の視点で原価を把握できる点がメリットです。ただし、導入・運用には時間とコストがかかり、社内体制や業務フローの見直しも必要になるケースがあります。

ERPについては、「ERPと会計システムの違いとは?最適なシステムを選ぶための基礎知識」で詳しく解説しています。

会計システム

会計システムは、財務処理に加えて部門別・製品別の原価を管理できる機能を備えたものもあります。既存の会計業務と原価管理をひとつのシステムで統合できるため、データの整合性を保ちながらスムーズに作業を進められます。また、予算編成や経営判断に直結する分析も効率的に実施できるのが特徴です。

会計システムについては、「【上場企業・大企業向け】会計ソフトの選び方 押さえておきたい機能や特長」で詳しく解説しています。

データ連携ツール

データ連携ツールは、企業内の複数システムに分散する情報を自動で収集・統合するツールです。原価計算に必要な購買情報や労務費、在庫データなどを一元化でき、手作業を減らしデータ集計の精度とスピードを向上させます。全社のデータ活用基盤として、原価管理に限らず幅広く活用されています。

代表的なツールとしてEAIやETLなどがあります。

詳しくは、「EAIとは?仕組みや機能からETLとの違い、選定のポイントまでわかりやすく解説」「データ連携ツールとは?機能や種類、選定時のポイントをわかりやすく解説」で解説しています。

正確な原価計算で経営判断をサポート

原価計算は、製品やサービスの価格戦略を支える重要な業務であり、利益の最大化を図るうえで欠かせません。材料費・労務費・経費の3要素を正確に把握し、費目別・部門別・製品別の3ステップで計算を進めることで、製品ごとの原価を明らかにできます。

しかし、手作業での原価計算は計算ミスや業務負荷の増大を招くため、システム導入による自動化と効率化を検討するとよいでしょう。

ICSパートナーズでは、お客様のシステム環境や課題に合わせて、効率的な原価計算を実現する会計・財務ソリューションを提供しています。原価計算に関するお悩みがあれば、ぜひお気軽にICSパートナーズへご相談ください。