• 2023. 06. 27
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財務会計と管理会計の相違点とは?
目的や機能の違いをわかりやすく解説!

財務会計と管理会計の相違点とは?

企業会計は、企業の財務・経営状況を外部に報告する役割を担う「財務会計」と、企業が自身をマネジメントするために行う「管理会計」に大別されます。今回は、それぞれの目的や機能を確認したうえで、違いをわかりやすく解説します。発展的な企業経営には欠かせない管理会計の導入メリットも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

財務会計とは?

財務会計は、企業の財務・経営状況を表す情報のことです。主に決算報告書(財務諸表)を指し、貸借対照表(バランスシート)や損益計算書、現金の動きを把握するキャッシュフロー計算書などが含まれます。

財務会計の目的は「財務・経営状況を外部へ報告すること」

財務会計は、外部の利害関係者に財政状態と経営成績を報告するための会計です。利害関係者には、株主や投資家、債権者、金融機関、税務署などが挙げられます。

会社法をはじめとする法令制度の規定に基づいて財務諸表が作成されることから、「制度会計」とも呼ばれます。

財務会計が持つ2つの機能

財務会計は、主に「情報提供機能」と「利害調整機能」の2種類の機能を持っています。

  • 情報提供機能・・・利害関係者に対して、投資や融資を判断するための情報を提供する機能
  • 利害調整機能・・・利害関係者間の利害を調整する機能

情報提供は、利害関係者の投資や融資の判断材料になるだけではありません。開示される財務諸表からは、経営者の資金の使い道や債権者への返済可能額、株主の配当金期待値などが読み取れます。つまり、利害関係者は、財務諸表が開示されると「自分に必要な情報を予測できるようになる」のです。

これが、結果的に利害関係者間の利害調整につながるとされています。

管理会計とは?

管理会計とは、経営者に自社の状況を伝え、経営判断に役立つ情報を提供する会計です。代表的なものには、事業計画書や中期経営計画資料、取締役会資料などがあります。

管理会計の目的は「企業をマネジメントすること」

管理会計は、企業が自社内でのみ利用する会計です。英語では「Management Accounting」と表されるとおり、企業が自らをマネジメントするために導入されます。

管理会計の情報は、経営者や管理者の経営意思決定に生かされます。

管理会計で行う4つの業務

管理会計で行う業務は、主に「経営分析」「予実管理」「原価管理」「資金繰り管理」の4つです。

経営分析

財務諸表や調査報告などの情報をもとに、企業の状態を客観的に把握するために行われるものです。コストを変動費と固定費に分類し、そこから赤字と黒字の境目となる「損益分岐点」や、売上高から変動費を差し引いた「限界利益」などを算出します。限界利益と損益分岐点を算出することで、固定費を上回り、かつ利益を出すために必要な売上高が見えてきます。

予実管理

設定した予算とそれに対する実績を比較して把握し、次なる目標の設定・達成に向けて軌道修正を行うためのものです。部門ごとの明確なKPI(中間目標)を設定するKPI管理なら、導き出される数値を定点観測し、目標値との乖離(かいり)を都度確認していけるため、特に目標を達成しやすくなります。

原価管理

原価をあらかじめ把握することで、コスト管理を行います。製品の製造やサービスの提供にかかるコストの適性を判断、それによって最適化を図るもので、製造業を中心に導入されています。

資金繰り管理

資金繰り管理では、入出金の流れを可視化して、過不足が生じないように管理します。利益が出ていても原資が不足することで黒字倒産するリスクがあり、経営の正常化には欠かせない業務です。

財務会計と管理会計の相違点

財務会計と管理会計の違いは、以下のとおりです。

  財務会計 管理会計
利用者 社外/利害関係者
(投資家・債権者・税務署など)
社内/経営管理者
(経営者や管理責任者など)
目的 財務状況や経営状況の開示 自社のマネジメント
義務か任意か 義務 任意
会計期間 1年・半年・四半期など 定めなし(1年・1カ月・週など)

利用者や目的の違い

財務会計の目的は、利害関係者に向けて財務状況や経営状況を伝えることです。利用者となる利害関係者は、投資家や債権者、税務署といった社外の人になります。

一方の管理会計は、経営者をはじめとする社内の人間が、自社の経営に役立てるために使うものです。外部に公開されるものではありません。

導入や会計期間における義務・任意の違い

財務会計は、すべての企業に義務づけられているものです。原則年1回(企業によっては半年や四半期の場合もある)、会計基準に準拠した財務諸表を作成し、外部報告や税金申告を行う必要があります。

管理会計の導入は、各企業の任意です。資料の形式や会計期間に至るまで、法的な定めはありません。

管理会計を導入するメリット

管理会計の導入は企業ごとの判断であるにもかかわらず、多くの企業が取り入れています。その理由は、得られるメリットが多いためです。ここでは、主なものを4つ紹介します。

PDCAが回せる

健全な企業経営のカギを握るとされている手法のひとつに、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価・検証)」「Action(改善)」を循環させるPDCAサイクルがあります。

会計業務の側面から企業経営の持続的な改良を図るための仕組みとして活用できるのが、管理会計です。Plan(計画)とCheck(評価・検証)の段階で重要な指標となる予実管理を効率的に実行することで、PDCAサイクル循環の加速に貢献します。

セグメントごとに分析・評価できる

セグメント情報とは、売上や財務状況を部門別、製品別などの事業単位で区切って算出したものです。セグメントごとに利益や売上の推移などを見ることで、細やかな経営判断が可能です。また、ひとつの軸にとどまらず、多次元分析(クロス分析)が可能な管理会計の分析評価を取り入れると、より多角的な経営判断が可能となります。これらによって財務諸表だけでは見えてこなかった課題や自社の強みが把握できます。

部門・個人別の情報が数値で見える化されることにより、明確な基準をもとに公平に評価できるようになる点も大きな魅力でしょう。部署ごと、個人ごとの目標設定や個別の評価により、モチベーションの向上にも役立ちます。

経営状況を把握・管理しやすい

管理会計の導入によってセグメント情報が取得できるようになると、経営者は知りたい情報をいつでも数値で把握できるようになります。抽象的な判断ではなく、具体的な評価軸や理由をもって経営管理にあたれるようになるということです。

さらに上手に管理会計を活用すれば、迅速な資金調達や黒字倒産の防止、バックオフィス管理まで改善可能です。閲覧権限を拡大すれば、部署単位や個人にも経営意識が芽生えるでしょう。

コストを削減できる

コスト管理やコスト削減は、現状の費用対効果を正確に分析・把握することから始まります。積極的に原価管理やセグメント情報などを活用すれば、無駄なコストを発見したり、削減したりといったことができます。

コストが削減できるだけでなく、必要なところに効果的に投資できるようになる点も、見逃せないメリットでしょう。管理会計の導入は、適正な予算編成や売上アップにもつながります。

財務会計だけでは経営マネジメントは難しい

「財務諸表さえあれば、ある程度の経営判断はできるのでは」と思うマネジメント層もいるかもしれません。しかし、事業規模が広がれば広がるほど、管理会計が必要になってくるはずです。

経営マネジメントにおいて大切なのは、「いかに社員一人ひとりが当事者意識を持って課題の発見・解決に取り組めるか」という点でしょう。

財務諸表は、よほど見方をしっかり理解している人でない限り、その情報を経営判断には生かしきれない、難解なものです。経営手法として単独で用いるのは、難しいと考えられます。

自社に即した形式で、社内の誰にとってもわかりやすく情報を可視化・共有できる管理会計があってこそ、効果的な経営マネジメントが実現します。

管理会計を活用し、社内一丸となって経営を発展させよう

財務会計と管理会計には、それぞれ異なる目的や役割があります。法的な義務や規定のない管理会計の導入は、それぞれの企業で判断が分かれるところでしょう。しかし、財務諸表だけでは、社員一人ひとりが当事者意識をもって経営課題に取り組むのは難しいのが実情です。自社のますますの発展を目指すなら、管理会計を導入し、社内で一丸となって取り組める環境づくりを進めてみてください。