- 2025. 09. 26
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経営指標とは?
種類・計算方法・活用ポイントをわかりやすく解説
企業経営において「数字で現状を把握し、的確な判断を下す」ために欠かせないのが「経営指標」です。しかし、ひとくくりに「経営指標」といっても、その種類は多岐にわたり、活用場面もさまざまです。本記事では、経営指標の基本的な概念から具体的な種類、計算方法、そして実際の活用ポイントまでをわかりやすく解説します。
- 目次
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経営指標とは
経営指標とは、企業の経営状況を数値で表現したものです。主に財務諸表や業務データを基に算出され、収益性・安全性・効率性・成長性などの観点から企業の経営状態を客観的に把握することができます。これらの指標は、経営判断・事業戦略の立案などさまざまな経営管理の場面で、基礎データとして活用されます。
経営管理については、「経営管理は効果的な組織運営に貢献!基礎知識からポイントまで解説」で詳しく解説しています。
経営指標が重要な理由
企業経営において経営指標が重要な理由は、以下の3点です。
客観的な経営状況の把握が可能になる
企業は環境変化や事業拡大により、経営判断を主観や経験だけに頼ることが難しくなっています。経営指標を活用することで、定量的かつ客観的に現状を評価できるため、感覚に依存しない的確な経営分析が可能になります。
経営分析については、「経営分析の5つの手法や見るべき指標、効率的に行うポイントまで解説!」で詳しく解説しています。
戦略・計画の立案に役立つ
経営指標は、過去の実績をベースに、成果の要因や課題の所在を可視化する役割を果たします。これにより、根拠のある目標設定や予算策定が可能となり、現場と経営陣の間で共通認識を築きやすくなります。
予算策定については、「予算策定の重要性って?流れと効果的に進めるポイントを解説」で詳しく解説しています。
意思決定を迅速化する
事業環境の変化は早く、迅速な判断が競争力を左右します。経営指標を定期的にチェックする体制を整えることで、問題の早期発見につながり、機動的な対応が可能になります。
経営指標をはじめとするデータを重視した経営手法は、データドリブン経営と呼ばれます。データドリブン経営については、「データドリブン経営とは?メリットや実現のステップを解説」で詳しく解説しています。
経済指標との違い
経営指標と混同されやすいのが「経済指標」です。経済指標は、国や地域全体の経済状況を表す指標で、GDP(国内総生産)、消費者物価指数、失業率などが代表例です。これらはマクロ経済の動向を把握するために使用されています。
一方、経営指標は個別企業の経営状況を表す指標です。企業が自社の経営改善や競合他社との比較分析のために活用するミクロ的な指標です。
ただし、両者は完全に独立しているわけではありません。経済指標の変化は企業経営に大きな影響を与えるため、経営指標を分析する際には、背景となる経済環境も考慮する必要があります。
経営指標の5分野と指標一覧
経営指標は、評価する観点によって大きく5つの分野に分けられます。分野ごとに代表的な指標を紹介します。
1.収益性を測る経営指標
企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを測る指標です。利益と売上高あるいは資本・資産との関係を数値化しています。
売上高総利益率
売上高総利益率(%)= 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
商品やサービスそのものの収益性を示します。この数値が高いほど、コストに対する売上の効率が良いことを意味します。業界平均との比較や過去との推移を見ることで、事業の基本的な収益構造を把握できます。
売上高営業利益率
売上高営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100
本業での稼ぐ力を表す重要な指標です。販売費や一般管理費も含めた本業での収益性を測定できます。この数値が継続して改善していれば、事業運営の効率化が進んでいることがわかります。
ROA(総資本経常利益率)
ROA(%)= 経常利益 ÷ 総資産 × 100
企業が保有する資産全体をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示します。借入金も含めた全ての資産に対する収益性を測定でき、経営効率の良さを表します。一般的に3%以上が良好とされています。
ROE(自己資本利益率)
ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
株主が投資した資本に対してどれだけの利益を生み出したかを示します。株主にとって特に重要な指標の一つで、投資効率の良さを表します。一般的に8%以上であれば良好とされています。
2.安全性を測る経営指標
企業の財務体質の健全性や倒産リスクの低さを評価する指標です。資金繰りや借入金の状況を把握するのに役立ちます。
自己資本比率
自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資産 × 100
企業の財務安定性を表す代表的な指標です。この数値が高いほど、借入金への依存度が低く、財務的に安定していることを意味します。一般的に30%以上が望ましいとされていますが、業界特性も考慮する必要があります。
流動比率
流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
短期的な支払い能力を測る指標です。1年以内に現金化できる資産が、1年以内に支払うべき負債をどの程度カバーできるかを示します。一般的に120%以上が安全とされています。
安全性分析については、「安全性分析とは?企業の財務健全性を測る5つの指標と注意点を解説」で詳しく解説しています。
3.活動性を測る経営指標
企業が保有する資産をどれだけ効果的に活用して事業活動を行っているかを測る指標です。資金繰りの改善や経営効率の向上に役立ちます。
総資産回転率
総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産
企業が保有する資産全体をどれだけ効率的に活用して売上を生み出しているかを示します。この数値が高いほど、少ない資産で多くの売上を上げていることになります。
売上債権回転率
売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権
売掛金の回収効率を表します。数値が高いほど売掛金の回収が早く、資金繰りが良好であることを意味します。回転期間(365日÷回転率)で何日で回収しているかも把握できます。
在庫回転率
在庫回転率 = 売上原価 ÷ 在庫
在庫管理の効率性を測る指標です。数値が高いほど在庫が効率的に販売されており、過剰在庫や売れ残りのリスクが低いことを示します。
4.生産性を測る経営指標
企業が投入した資源(人材、資本など)に対してどれだけの付加価値を生み出しているかを測る指標です。経営資源の効率的な活用状況を把握するのに役立ちます。
労働生産性
労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数
従業員1人が生み出した付加価値額を示します。数値が高いほど従業員の生産性が高いとされますが、適正な値は業種によって大きく異なるため、競合他社との比較が重要です。
資本生産性
資本生産性 = 付加価値 ÷ 有形固定資産
投入した資本(機械、設備、土地など)に対する付加価値の創出効率を示します。数値が高いほど、効果的な資本投資ができていることを意味します。
5.成長性を測る経営指標
企業の将来性や成長ポテンシャルを評価する指標です。投資判断や事業展開の検討に重要な情報を提供します。
売上高増加率
売上高増加率(%)=(当期売上高 - 前期売上高)÷ 前期売上高 × 100
企業の事業拡大の状況を最も直接的に表す指標です。継続的にプラス成長を維持していれば、市場での競争力があることを示します。
営業利益増加率
営業利益増加率(%)=(当期営業利益 - 前期営業利益)÷ 前期営業利益 × 100
本業での成長性を表します。売上が増えても営業利益が伸びていなければ、コスト管理に課題があることがわかります。
総資産増加率
総資産増加率 (%)=(当期総資産 - 前期総資産)÷ 前期総資産 × 100
前期に比べて総資産がどの程度増加したかを示します。事業規模の拡大や設備投資の状況を把握できる指標です。
経営指標の算出に必要な3つの財務諸表
経営指標を算出するためには、企業の財務諸表から必要なデータを取得する必要があります。主要な財務諸表には次の3つがあります。
損益計算書
損益計算書は企業の経営成績を表す財務諸表で、収益から費用を差し引いた各段階利益の状況を示します。一定期間における企業の収益性や事業効率を把握できます。
この財務諸表からは、売上高や営業利益、経常利益、当期純利益といった数値を取得でき、売上高営業利益率やROE、ROAの算出に活用されます。
貸借対照表
貸借対照表は企業の財政状態を表す財務諸表で、決算日時点での資産構成と資金調達の内訳を示します。企業の財務安定性や資本効率を評価する基礎データとなります。
この財務諸表からは、総資産や流動資産、固定資産といった数値を把握でき、自己資本比率や総資産回転率、流動比率などの経営指標を算出する際に活用されます。
キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は現金収支を表す財務諸表で、営業・投資・財務活動別の現金流動を示します。損益計算書の利益と実際の現金増減の差異を把握し、企業の資金繰り実態を分析できます。
この財務諸表からは、営業キャッシュフローや投資キャッシュフローなど、企業の現金創出力や投資活動の状況を示すデータを取得でき、財務健全性の評価に重要な役割を果たします。
経営指標を活用する際のポイント
経営指標を効果的に活用するためには、単に数値を算出するだけでは意味がありません。客観的な経営状況の把握や迅速な意思決定につなげるためには、次のポイントを押させる必要があります。
指標は単体でなく組み合わせ・推移で見る
経営状況は単一の指標だけでは正確に評価できず、時間の経過とともにどう変化しているかを見ることが重要です。収益性、安全性、活動性、生産性、成長性の各分野から複数の指標を選択し、3~5年程度の推移をバランスよく分析することが必要です。
業界平均や競合他社との比較を行う
経営指標の値がどの程度妥当かを評価するには、業界平均や競合他社との比較が欠かせません。指標の適正水準は業種ごとに異なり、単体の数値だけでは企業の状況を正確に判断することが難しいからです。比較により、自社の強み・弱みを相対的に把握することで、リソース配分や経営改善の優先順位を整理することが可能です。
モニタリング体制を整備する
経営指標は継続的に監視し、現状分析に留まらず具体的な対策につなげることが重要です。月次、四半期、年次といった定期的なタイミングはもちろん、必要に応じて迅速に主要指標をチェックし、目標値との乖離や異常値を早期発見する仕組みが必要です。重要な指標については閾値(しきいち)を設定し、基準を下回った場合の対応策を事前に決めておくことで、迅速な経営判断と改善行動を実現できます。
業績管理については、「業績管理のポイントと流れ!KPI・KGIやPDCAサイクルなどが重要」で詳しく解説しています。
経営指標は経営判断に結びつける仕組みづくりが不可欠
経営指標は、企業の現状を客観的に把握し、戦略立案や迅速な意思決定を行ううえで欠かせません。活用にあたっては、単一の数値に頼るのではなく、複数の指標を組み合わせ、時系列の推移や業界水準との比較を通じて総合的に分析することが重要です。
ただし、経営指標は、把握・分析するだけでは十分ではありません。継続的にモニタリングし、経営の意思決定へと結びつける仕組みづくりが必要です。その一方で、これらの指標を定期的に集計・可視化するには、多大な工数と専門的なノウハウが求められるのも事実です。
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