• 2026. 03.11
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ローリングフォーキャストとは?
メリット、課題と効果的に運用する方法を解説

ローリングフォーキャストとは?メリット、課題と効果的に運用する方法を解説

年度初めに立てた予算が年度末には実態とかけ離れてしまう、という経験はありませんか。従来の年次予算管理の限界が指摘されるなか、ビジネス環境の変化に応じて事業計画を見直す「ローリングフォーキャスト」という手法が注目されています。

本記事では、ローリングフォーキャストの意味から、導入のメリット・デメリット、具体的な実施方法まで、経営企画や財務部門の実務担当者が知っておくべき情報をわかりやすく解説します。

目次

ローリングフォーキャストとは

ローリングフォーキャストとは、事業の予測や計画を固定せず、ビジネス環境の変化に応じて定期的に見直す経営管理手法です。

計画を年度で固定せず、四半期や月ごとに見直しを行い、市場の変化や実績の状況を反映させながら、常に最新の予測を更新していくのが特徴です。

例えば、四半期ごとに4四半期先まで予測する場合は、次のように予測期間を更新していきます。

例:四半期ごとに更新する場合(4四半期先まで予測)

  • ・20X2年4月(Q1開始):Q1~Q4までを予測
  • ・20X2年7月(Q2開始):Q1の実績をもとに、Q2~翌年Q1までを予測
  • ・20X2年10月(Q3開始):Q1~Q2の実績をもとに、Q3~翌年Q2までを予測
  • ・20X3年1月(Q4開始):Q1~Q3の実績をもとに、Q4~翌年Q3までを予測

このように、予測期間が「転がる(ローリング)」ように先へ進んでいくことから、ローリングフォーキャストと呼ばれています。

フォーキャストの基本的な考え方や管理目的については、「フォーキャストとは?管理の目的や精度向上のポイント、ツールを解説」で詳しく解説しています。

一般的な予算管理との違い

一般的な予算管理では、年度初めに1年分の計画を策定したら、基本的にその計画を1年間使い続けます。

一方、ローリングフォーキャストでは、計画を年度で固定せず、定期的に予測を更新します。そのため、常に最新の実績や外部環境を反映した見通しに基づき、経営判断を行える点が大きな違いです。

ローリングフォーキャストの重要性が高まっている背景

ローリングフォーキャストの重要性が高まる背景には、不確実性を増すビジネス環境があります。

グローバル競争の激化、感染症の流行、地政学リスクなど、予測困難な要因が企業活動に影響を及ぼすケースが増えており、年度初めに策定した計画が数か月後には実態と乖離することも珍しくありません。

こうした状況を背景に、変化を織り込みながら定期的に見通しを更新できるローリングフォーキャストが注目されるようになりました。

年次予算やローリングフォーキャストと密接に関係する予実管理については、「予実管理とは?必要性や手順、成功のためのポイント、注意点まで徹底解説」で詳しく解説しています。

ローリングフォーキャストのメリット

ローリングフォーキャストを導入するメリットには、次の3つが挙げられます。

メリット1:環境変化への迅速な対応が可能になる

ローリングフォーキャストの最大のメリットは、市場や事業環境の変化に素早く対応できる点です。

年度途中には、原材料価格の高騰や為替変動、競合他社の動向など、想定外の事象が発生することがあります。従来の年次予算では、こうした変化に対応しにくく、経営判断の柔軟性に課題がありました。ローリングフォーキャストでは、最新の動向を速やかに計画へ反映できるため、現実に即した予測に基づき、投資判断やコスト調整といった経営判断を迅速に行いやすくなります。

メリット2:経営計画の達成可能性が高まる

目標と現実のギャップを早期に把握できるため、必要な対策を検討する機会を増やすことができます。

年次予算では期末近くになって目標未達が判明しても打てる手が限られますが、ローリングフォーキャストでは軌道修正の余地が十分に残されている段階で状況を把握できます。たとえば、売上が伸びそうな事業への追加投資や、低迷分野のコスト抑制など、経営資源の配分を最新情報に基づいて検討することが可能です。

メリット3:常に一定期間先を見通せる

従来の年次予算では年度末が近づくにつれて計画の対象期間が短くなり、中長期的な投資判断や採用計画が立てにくくなります。ローリングフォーキャストでは、年度のどの時点でも常に一定期間先(たとえば4四半期先や1年先など)まで見通せます。そのため、中長期的な施策を、タイミングに左右されることなく検討することも可能です。

ローリングフォーキャストは管理会計の高度化施策の一つです。管理会計全体の位置づけについては、以下の記事もご覧ください。

財務会計と管理会計の相違点とは?目的や機能の違いをわかりやすく解説!

ローリングフォーキャストの課題

ローリングフォーキャストには、導入や運用にあたっていくつかの課題も存在します。ここでは、代表的な課題を2つ紹介します。

課題1:責任の所在が不明瞭になる

ローリングフォーキャストでは、予測を定期的に見直すという性質上、責任の所在が曖昧になりがちです。従来の年次予算は「達成すべき目標」として機能し、予算と実績の差異が明確に評価されるため、各部門の責任者は予算達成に対する強いコミットメントを持ちます。

一方、ローリングフォーキャストは「現実的な見通し」を重視するため、予測と実績の差異が「環境変化による修正」として受け入れられやすくなります。その結果、目標達成への意識が薄れたり、予測を都合よく変更したりする懸念が生じるおそれがあります。

課題2:担当部門の負担が増える

ローリングフォーキャストは予測を定期的に更新するため、従来の年次予算に比べて、経理部門や経営企画部門など担当部門の業務負担が増加します。各事業部門からデータを収集し、分析したうえで予測を更新するプロセスには、一定の時間と労力が必要です。特にシステムが未整備で手作業が中心となる場合、集計や確認作業が煩雑になり、担当者の負担はさらに大きくなります。

ローリングフォーキャストを効果的に運用する方法

ローリングフォーキャストの課題を克服し、効果的に運用するにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、課題を解決する方法を紹介します。

目標管理とローリングフォーキャストを分離する

責任の所在が不明瞭になる課題に対しては、目標管理とローリングフォーキャストを明確に分離して運用することが有効です。

例えば、年次予算を「達成すべき目標」として残しつつ、ローリングフォーキャストは「現実的な見通しを示すツール」として位置づけます。それぞれの役割と使い分けを社内で明確に共有し、ローリングフォーキャストで目標が軽視されないよう、適切なルールのもと運用するとよいでしょう。

業務負担を軽減するツール・システムを導入する

担当部門の負担増加に対しては、フォーキャスト管理を効率化するツール・システムの活用が欠かせません。データの収集・集計・分析を自動化することで、予測更新を効率化できます。ローリングフォーキャストの運用を支援するツール・システムには、以下のようなものがあります。

  • ERP(統合基幹業務システム):営業、財務、人事など各部門のデータを一元管理できます。
  • 会計・財務システム:売上や利益の実績を正確に把握でき、予測数値との比較が容易です。
  • BIツール:複数のシステムから収集したデータを蓄積・分析し、ダッシュボードで可視化します。
  • データ連携ツール:異なるシステム間のデータを連携・自動化し、手作業によるデータ収集を削減します。

上記ツール・システムの特徴については、下記でさらに詳しく解説しています。

シンプルな運用設計から始める

まずはシンプルな形でスタートすることも重要です。予測項目を主要な財務指標に絞る、更新頻度を四半期ごとにする、対象部門を限定するなど、取り組みやすい範囲で開始し、徐々に拡大していく段階的な方法が現実的です。小さく始めることで組織の抵抗感を減らし、PDCAサイクルを回しながら自社に合った運用方法を見つけていくこともできます。

ローリングフォーキャストで市場環境の変化に強い経営を実現

ローリングフォーキャストは、常に一定期間先までの予測を継続的に更新していく経営管理手法です。従来の固定的な年次予算と異なり、市場環境の変化に柔軟に対応できるメリットがあります。

導入にあたっては、責任の所在の明確化や業務負担の増加といった課題がありますが、目標管理との分離、システムの活用、段階的な導入計画によって、これらの課題を克服できるでしょう。

ICSパートナーズでは、お客様のシステム環境や課題に合わせて、最適なフォーキャスト管理を実現するソリューションを提供しています。

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