• 2026. 02. 13
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令和7年度 税制改正のポイント

デロイト トーマツ税理士法人
望月 伸彦  /  田形 俊輔  /  森 久美子

(9) 個人所得課税

① 物価上昇局面における税負担調整及び就業調整への対応

基礎控除等及び給与所得控除の最低保障額の引上げ
基礎控除
  • 合計所得金額が2,350万円以下の場合に基礎控除額が以下のとおり引き上げられる。
  • 令和7年分以後の所得税に適用され、給与所得者については令和7年分の年末調整において適用される。
  • 源泉徴収については令和8年1月1日以後支払分から適用される。
合計所得金額 控除額
改正前 改正後
令和7年分及び令和8年分 令和9年分以後
132万円以下 48万円 95万円 95万円
132万円超336万円以下 88万円 58万円
336万円超489万円以下 68万円
489万円超655万円以下 63万円
655万円超2,350万円以下 58万円
2,350万円超2,400万円以下 48万円 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円 32万円 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円 16万円 16万円
2,500万円超 0万円 0万円 0万円
扶養親族及び同一生計配偶者の合計所得金額の要件など
  • 基礎控除の引上げに併せて以下のとおり、扶養親族の合計所得金額の要件等が引き上げられる。
  改正前 改正後
扶養親族及び同一生計配偶者の合計所得金額の要件 48万円以下 58万円以下
ひとり親控除の対象となる子の総所得金額等の
合計額の要件
48万円以下 58万円以下
勤労学生の合計所得金額の要件 75万円以下 85万円以下
給与所得控除の最低保障額
  • 給与所得控除の最低保障額が以下のとおり引き上げられる。
  改正前 改正後
給与所得控除の最低保障額 55万円以下 65万円以下
適用時期

・これらの改正は、令和7年分以後の所得税に適用され、給与所得者については令和7年分の年末調整において適用される。

・源泉徴収については令和8年1月1日以後支払分から適用される。

特定親族特別控除の創設

生計を一にする19歳以上23歳未満の親族等(配偶者等を除く合計所得金額123万円以下の者)で控除対象扶養親族に該当しない者を有する者は、その親族等の合計所得金額により、以下の金額が控除される。

親族等の合計所得金額 控除額
58万円超85万円以下 63万円
85万円超90万円以下 61万円
90万円超95万円以下 51万円
95万円超100万円以下 41万円
100万円超105万円以下 31万円
105万円超110万円以下 21万円
110万円超115万円以下 11万円
115万円超120万円以下 6万円
120万円超123万円以下 3万円
適用時期

・令和7年分以後の所得税に適用され、給与所得者については令和7年分の年末調整において適用される。

・源泉徴収については令和8年1月1日以後支払分から適用される。

② スタートアップへの投資促進等

エンジェル税制の見直しにより、繰戻し還付の制度が創設されました。 エンジェル税制の対象となる「特定中小会社」の株式を払込みにより取得した場合に、その取得金額をその年分の株式等の譲渡所得等から控除しきれない場合で、 その前年に株式譲渡益が発生していた場合には、前年の所得税額のうち、対応する部分の税額の還付請求が可能となります。 そのほか、株式が特例控除対象特定株式である場合の措置などが講じられています。この改正は、令和8年1月1日以後に特定株式を払込みにより取得した場合等に適用されます。

③ 「投資運用立国」の実現に向けた環境整備

確定拠出年金制度の見直し、NISAの利便性向上などの措置
確定拠出年金制度の見直し(確定拠出年金法等の改正を前提に、見直し後も現行の税制上の措置を適用)
  • マッチング拠出について、加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えることができないとする制約が廃止される。
  • 企業型確定拠出年金の拠出限度額が以下のとおりとされる。
      現行の拠出限度額 見直し額
    確定給付企業年金制度未加入者 月額 5.5万円 月額 6.2万円
    確定給付企業年金制度加入者 月額 5.5万円 から以下を控除
    確定給付企業年金の掛金相当額
    月額 6.2万円 から以下を控除
    確定給付企業年金の掛金相当額
  • 個人型確定拠出年金の拠出限度額についても、月額上限額が7.5万円~6.2万円(企業年金加入者は、その掛金相当額控除後)に引き上げられる。
NISAの利便性向上等
  • 特定累積投資勘定(つみたて投資枠)に受入れ可能な上場株式投資信託の受益権(ETF)の取得対価の額が引き上げられる(一口当たりの取得対価の額を、1,000円以下から1万円以下に引き上げる)。
  • 金融機関変更時の即日買付けが可能とされる など。

④ 退職所得の計算等に係る見直し

退職所得控除額の計算の見直し及び源泉徴収票の提出義務拡大

退職手当等(確定拠出年金法の老齢給付金として支給される老齢一時金(以下、老齢一時金)を除く) の支払を受ける年の前年以前9年内(現行では4年内(現行、所令70条1項二号))に老齢一時金の支払を受けている場合には、 その老齢一時金等について、退職所得控除額の計算における勤続期間等の重複排除の特例の対象とされる。

  • 令和8年1月1日以後に老齢一時金の支払を受けている場合で、同日以後に支払を受けるべき退職手当等について適用
  • この改正に併せて、老齢一時金に係る退職所得の受給に関する申告書の保存期間が10年(現行では7年)とされる。

退職手当等の支払をする者は、その支払を受けるすべての居住者について源泉徴収票を税務署長に提出することとされ、源泉徴収票の提出範囲が拡大するので留意する必要がある。

  • 現行は、退職手当の支払をする法人の役員である居住者についてのみ提出義務がある(現行、所規94条2項)。
  • 令和8年1月1日以後に提出すべき源泉徴収票から適用

(10) 納税環境整備

取引に係るやり取りから会計・税務までのデジタル化に対応する観点から、取引データの保存及び処理を自動化するシステムを導入している法人について次の要件を満たした場合には、 電子データについて隠蔽・仮装がある場合の重加算税10%加重の適用対象から除外されます。

重加算税の加重を適用しないための要件 … あらかじめ届出書を提出の上、
以下を充足する必要がある。
No. 概要 要件
データ送受信と保存について訂正削除履歴を残す、又は訂正削除不可 その電子取引の取引情報に係る電磁的記録の記録事項について 訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができる特定電子計算機処理システム(訂正又は削除を行うことができないものを含む。)を 使用してその電磁的記録の授受及び保存を行うこと
電子帳簿記録時の訂正削除履歴を残す、又は記録前の訂正削除不可 その電子取引の取引情報に係る電磁的記録の記録事項(金額に係るものに限る。)を訂正又は削除を行った上で国税関係帳簿に係る電磁的記録等に記録した場合には、 その訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができる特定電子計算機処理システム(訂正又は削除を行った上で国税関係帳簿に係る電磁的記録等に記録することができないものを含む。)を 使用してその電磁的記録の授受及び保存を行うこと
電子データと電子帳簿の相互関連性確保 その電子取引の取引情報(請求書・納品書等の重要書類に通常記載される事項に限る。)に係る 電磁的記録の記録事項とその取引情報に関連する国税関係帳簿に係る電磁的記録等の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと
電子データの授受、保存の状況確認 上記①及び②の特定電子計算機処理システムを使用してその電子取引の取引情報に係る電磁的記録の授受及び保存を行ったことを確認することができるようにしておくこと
適用関係
令和9年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される。 

3. おわりに

今回の税制改正につきましては、法人税関連では防衛特別法人税や、グローバル・ミニマム課税などの新しい制度の創設、 中小企業の設備投資に対する既存措置の延長・見直し、新リース会計基準に対応した改正などが行われています。 また、個人所得課税については、基礎控除等の引き上げにより、個人の手取り額を増加させるための措置などが講じられています。

本コラムをご一読いただくことで、皆様の令和7年度税制改正に関する理解の一助になりましたら幸いでございます。

本記事の内容は、現時点の情報に基づく一般的な事項の記載にとどまります。 したがって、本記事で説明した税制等の適用を前提とした取引等を実施される場合は、個別の事実関係を踏まえて、専門家の助言を得る事が必要です。 なお、会員又は本記事を入手された方が、本記事の内容に依拠した事によって生じた損害等については執筆者・所属法人は一切の責任を負いません。