• 2026. 02.25
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経理業務のAI活用とは?
メリット・具体例・導入ステップ・注意点を解説

経理業務のAI活用とは?メリット・具体例・導入ステップ・注意点を解説

経理業務の効率化や人手不足の解消を目指す企業にとって、AI(人工知能)の活用は今や避けて通れないテーマとなっています。請求書処理や仕訳入力といった定型業務に多くの時間を費やしている経理部門では、AIを導入することで大幅な工数削減と業務品質の向上が期待できます。

本記事では、経理業務におけるAI活用の背景から具体的な導入方法、注意点まで、実践的な情報を網羅的に解説します。これから経理業務のデジタル化を検討している企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

目次

経理業務でAI活用が注目される背景

近年、経理業務でのAI活用が急速に注目を集めています。AIは人工知能とも呼ばれ、人間の判断や作業を支援する技術全般を指します。

この流れを後押しする要因として、次のような要因があります。

  • 人手不足の深刻化
    労働人口の減少により、経理部門の体制維持が難しくなっています。特に、決算期には業務が集中し、人手中心の運用では限界が見え始めています。
  • 自動化技術の成熟
    OCR(光学式文字読み取り装置)技術やデータ処理の自動化技術の精度が向上により、請求書処理や仕訳入力などの定型業務を確実に自動化できる環境が整いつつあります。
  • 経理部門に求められる役割の変化
    記録・計算だけでなく、経営判断を支える分析や提案業務への期待が高まっています。

これらの背景から、定型業務はAIに任せ、人間はより付加価値の高い業務に専念する体制への転換が進んでいます。

経理業務における自動化技術とAIの違い

経理業務で「AI活用」というと、「自動化」と同じものと捉えられることがありますが、両者には次のような違いがあります。

自動化技術(RPA・OCRなど)

あらかじめ設定されたルールやフローに従い、定型業務を繰り返し実行する仕組みです。RPAやOCR技術が代表的です。請求書の読み取りやデータ転記といった反復作業に適しています。

近年は、AI技術を組み込んだ「AI-OCR」の登場により、レイアウトが異なる非定型帳票にも柔軟に対応できるようになっています。

RPAについては、「RPAで経理・会計業務の効率化を!導入メリットや活用のポイントを紹介」で詳しく解説しています。

AI(機械学習・深層学習・生成AIなど)

蓄積されたデータからパターンや傾向を学習し、状況に応じた判断や提案を行う技術です。

過去の仕訳履歴から最適な勘定科目を推奨したり、財務データの分析を支援したり、経理担当者からの問い合わせに自動応答するといったことができます。単なる作業の代行を超えた知的な支援が可能です。

経理業務でAIが得意・不得意なこと

AIの得意・不得意を正しく理解することが重要です。

AIが得意な業務の特徴

  • ルールや判断基準が明確
  • 繰り返し発生し、件数が多い
  • 人による判断のばらつきが起きやすい
  • 正解パターンを過去データから学習できる

例えば、請求書からの情報抽出や仕訳パターンの提案、数値データの集計、過去データに基づく予測などが挙げられます。

AIが不得意な業務の特徴

  • 未学習の内容の判断
  • 状況や文脈の理解が必要な業務
  • 人との調整や合意形成が必要な内容の判断

例えば、イレギュラーな取引の会計処理判断、税務上のグレーゾーンの解釈、経営判断を伴う財務戦略の立案、取引先との交渉や調整などは、依然として人間の専門知識と経験が必要です。

経理業務にAIを活用するメリット

経理業務にAIを活用することで、次のようなメリットが得られます。

業務効率化

仕訳入力や請求書処理など、定型的な反復作業を自動化できるため、大幅な業務効率化が図れます。決算処理のスピードが向上し、決算の早期化にも役立ちます。

経理担当者は、単純な定型業務から解放され、より付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。

決算早期化については、「決算早期化が求められる背景とメリットとは?ボトルネックや解決方法を解説」で詳しく解説しています。

ヒューマンエラーの削減

人間が手作業で行う業務には、どうしてもミスが発生します。特に大量のデータ入力や転記作業では、疲労による入力ミスや見落としが起こりがちです。

AIによる自動処理では、一度正しく設定すれば同じ精度で処理を継続できるため、転記ミスや計算ミスといったヒューマンエラーを大幅に削減できます。また、AIが異常値や不整合を検知してアラートを出す機能により、ミスの早期発見も可能になります。

属人化の解消

経理業務では、特定の担当者しか処理方法を知らない「属人化」が課題となることが少なくありません。担当者の休暇や退職時に業務が滞るリスクがあります。

AIは過去のデータから業務パターンを学習するため、パターン化された作業を自動化できます。経験の浅い担当者でも、システムの提案に従って適切な処理を行えるようになり、特定の人に依存しない体制づくりに役立ちます。

経理業務におけるAI活用例7選

ここからは、実際に経理業務でAIがどのように活用できるか、具体的な業務シーンごとに紹介します。

活用例1. 請求書処理の自動化

AI-OCR(光学文字認識)技術を活用することで、紙やPDFの請求書から取引先名、金額、日付、品目などの情報を自動で読み取り、会計システムに入力できます。請求書のフォーマットが取引先ごとに異なる場合でも、AIが学習して対応するため、手入力の手間を削減できます。手書き文字の認識精度も向上しており、すでに実務での活用が進んでいます。

活用例2. 経費精算の自動化

領収書をスマートフォンで撮影するだけで、AIが内容を読み取り、経費科目を自動判定します。規定違反のチェックもAIが行うため、申請者・承認者双方の負担を軽減できます。承認ルートの自動設定により、申請から承認までを効率化し、時間短縮にもつながります。

活用例3. 仕訳・帳簿作成

過去の仕訳パターンを学習したAIが、取引内容から適切な勘定科目と仕訳を提案します。銀行明細やクレジットカード明細とも自動連携できるため、日々の記帳業務の効率化が図れます。定型的な取引であれば、ほぼ自動で仕訳が完了します。

活用例4. 決算業務の補助

月次決算や年次決算に必要な集計作業をAIが自動で実行します。前期比較や予実対比のレポート作成、勘定科目ごとの異常値検知なども可能です。

活用例5. レポート作成・分析支援

AIが膨大な財務データから傾向やパターンを抽出し、視覚的なダッシュボードとして提供します。売上予測やキャッシュフロー予測など、経営判断に必要な情報をタイムリーに得られます。レポート作成にかかる時間も削減できます。

活用例6. 決算書・財務書類の翻訳

海外取引先や親会社への報告が必要な企業では、決算書や財務レポートの翻訳が定期的に発生します。AIを活用することで、会計用語を含む専門的な文書でも短時間で翻訳でき、翻訳コストの削減にもつながります。

活用例7. 社内問い合わせ対応(AIチャットボット)

「経費精算の方法は?」「勘定科目はどれを使えばいい?」といった社内からの問い合わせに、AIチャットボットが24時間自動で回答します。問い合わせの手間を省き、自己解決が促せるため、問い合わせの削減につながり、経理担当者の本来業務に集中できる環境が作れます。

経理業務にAIを導入するステップ

経理業務にAIを導入する際は、次のステップで進めると効果的です。

ステップ1:現状業務の棚卸し

現在の経理業務をすべて洗い出し、各業務にかかる時間や頻度、担当者を明確にします。業務フローを可視化することで、どこにボトルネックがあるか、どの業務に時間がかかっているかが見えてきます。この棚卸し作業が、効果的なAI導入の土台となります。

ステップ2:AI活用の対象業務の選定

棚卸しした業務の中から、AI活用に適した業務を選定します。処理量が多く定型的な業務、ミスが発生しやすい業務、属人化している業務などは優先的に取り組むとよいでしょう。また、初めてAIを導入する場合は、請求書処理や経費精算など、効果が見えやすい業務から小さく始めることをおすすめします。

ステップ3:AIツール選定

AI活用の対象業務が決まったら、それに適したAIツールを選定します。選定時のポイントは、既存の会計システムとの連携性、導入・運用コスト、サポート体制の充実度、セキュリティ対策などです。可能であれば、本格導入前に実際のデータを使ってツールの性能を検証し、期待する効果が得られるか、現場の業務フローに合うかを確認することで、導入後のトラブルを防げます。

ステップ4:段階的な導入・改善

まずは一部門や特定の業務で運用を安定させてから、ほかの業務への展開を進めます。導入後は、AIの学習精度や処理スピード、ユーザーの使い勝手などを定期的に確認し、改善を繰り返すことが重要です。

経理業務にAIを導入する注意点

ブラックボックス化の防止

AIが自動で処理を行うようになると、なぜその結果になったのか、処理の根拠が見えにくくなる「ブラックボックス化」のリスクがあります。特に会計処理では、監査や税務調査の際に処理の根拠説明が求められるため、AIの判断ロジックを把握しておくことが不可欠です。導入時には、AIがどのようなルールで処理しているか、どんな学習データを使っているかを理解し、定期的に処理結果をチェックする体制を整えましょう。

セキュリティ・個人情報管理の徹底

経理業務では、取引先情報や従業員の給与データなど、機密性の高い情報を扱います。AIツールを導入する際は、データの暗号化、アクセス権限の管理、データ保管場所などのセキュリティ対策を十分に確認する必要があります。特にクラウド型のAIサービスを利用する場合は、データがどこに保管されるか、第三者提供の有無、サービス終了時のデータ取り扱いなどを契約前に明確にしておくことが重要です。

AI・人間の役割分担の明確化

AIは業務を支援するツールであり、すべてを代替するものではありません。定型業務の処理はAIに任せつつも、最終的な承認や例外対応は経理担当者が行う必要があります。こうした明確な役割分担を設定し、関係者全員に認識させることが重要です。

AIを活用して経理業務を次のステージへ

経理業務にAIを導入することで、多くの定型作業を自動化することが可能になります。その結果、経理担当者はルーティンワークに追われることなく、財務分析や経営判断の支援といった、人にしかできない業務に注力できるようになります。

一方で、AI導入は「導入すれば終わり」ではありません。業務内容を見極めたうえで適切な範囲に適用し、小さく始めて効果を確認しながら段階的に広げていくことが、AI活用を成功させるポイントです。

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