- 2025. 09. 05
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データウェアハウス(DWH)とは?
導入メリットや選定のポイントを解説
企業に散在するデータを統合し、効果的な分析を行うために注目されているのが「データウェアハウス(DWH)」です。複数のシステムから収集したデータを一元管理し、意思決定に活用できる形で整理するシステムです。本記事では、データウェアハウスの基礎知識から導入メリット、導入に適した企業、選定のポイントまでわかりやすく解説します。
- 目次
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データウェアハウス(DWH)とは
データウェアハウス(Data Warehouse、DWH)とは、企業内に存在する複数のシステムから収集したデータを統合・蓄積する専用システムです。販売管理、会計、人事、在庫管理など、各部門で独立運用されているシステムから生成されるデータを、ETL(抽出・変換・格納)プロセスによって統一された形式で一元化します。
これにより、企業は正確で迅速な経営判断を行えるだけでなく、データを中心に据えたデータドリブン経営を実現できます。
競争激化や市場変化の早い現代において、データウェアハウスは企業の競争優位性を支える重要なインフラとして、重要な役割を果たします。
ETLやデータドリブン経営については、下記の記事で詳しく解説しています。
- EAIとは? 仕組みや機能からETLとの違い、選定のポイントまでわかりやすく解説
- データドリブン経営とは?メリットや実現のステップを解説
データウェアハウスとデータベース・BIツール・ERPとの違い
データウェアハウス(DWH)は、しばしば他のシステムやツールと混同されがちです。ここでは、データベース(DB)、BIツール、ERPとの違いを整理し、それぞれの役割を明確にします。
データベース(DB)との違い
データベース(DB)は、日常業務で発生するデータをリアルタイムで処理・更新するシステムです。一方、データウェアハウスは、長期的なデータの蓄積とデータ分析に強みを持つシステムです。大量のデータを効率的に分析するために設計されており、通常のデータベースに比べて飛躍的に高い検索・分析性能を発揮できます。
BIツールとの違い
BIツール(Business Intelligence)はデータを可視化・分析するためのソフトウェアです。
データウェアハウスがデータの「保管庫」であるのに対し、BIツールはそのデータを活用する「分析ツール」という位置づけになります。実際の運用では、データウェアハウスに蓄積されたデータをBIツールで分析・可視化するという組み合わせで使用されることが一般的です。
BIツールについては、「BIツールの基本や活用シーンを解説!データドリブンな組織を作るためのガイド」で詳しく解説しています。
ERPとの違い
ERPは企業の基幹業務を統合管理するシステムで、リアルタイムな業務処理が主目的です。データウェアハウスはERPをはじめとする複数システムからデータを収集し、分析用途に特化してデータを整理・蓄積する点で役割が異なります。
ERPについては、「ERPと会計システムの違いとは?最適なシステムを選ぶための基礎知識」詳しく解説しています。
データウェアハウス(DWH)の主な機能
データウェアハウスの主な機能には、次のようなものがあります。
サブジェクト別のデータ構成
データウェアハウスは、売上、顧客、商品、財務などの分析テーマ(サブジェクト)ごとにデータを体系的に構成します。各部門のシステムから収集したデータを、分析目的に応じて再編成することで、効率的な情報活用が可能になります。
複数データソースの統合
異なるシステムやフォーマットで管理されていたデータを、統一された形式に変換・統合します。データの不整合や重複を解消し、信頼性の高いデータセットを構築します。
データの時系列管理
データウェアハウスは、過去から現在までの変化を追跡できるよう、時系列での履歴管理機能を提供します。売上の推移、顧客行動の変化、市場トレンドの分析など、時間軸を考慮した多角的な分析が実現できます。
長期間のデータ保持
通常の業務システムでは削除される過去データも、データウェアハウスでは長期間保持し続けます。数年から数十年にわたるデータ蓄積により、長期トレンド分析や季節性の把握が可能になります。
データウェアハウス(DWH)活用のメリット
データウェアハウスの活用によって、次のようなメリットが得られます。
データを一元管理できる
企業の各部門で個別に運用されていた販売、顧客管理、会計などのシステムデータを、データウェアハウスが統一された形式で一箇所に集約します。データの整合性と品質が確保され、必要な情報へのアクセス時間を大幅に短縮できます。
データの一元管理については、「一元管理とは?メリット・デメリットを知り経営の効率化に活かそう!」で詳しく解説しています。
意思決定のスピードと精度が向上する
統合されたデータを基盤とすることで、経営陣は包括的な視点から企業状況を把握できるようになります。過去のトレンドから将来予測まで、客観的なデータに基づいた戦略的な意思決定を迅速に行えるようになります。
部門間での連携や予実管理に役立つ
データウェアハウスは、組織のサイロ化を解消し、部門横断的な情報共有を促進します。営業データと在庫データを組み合わせた需要予測や、人事データと業績データを統合した生産性分析など、従来は困難だった多角的な分析が実現します。さらに、予算計画と実績データの統合管理により、リアルタイムでの進捗把握と迅速な軌道修正が可能になります。
予実管理やサイロ化については、下記の記事で詳しく解説しています。
- 予実管理とは?必要性や手順、成功のためのポイント、注意点まで徹底解説
- サイロ化とは?発生する原因や問題、解消するための方法をわかりやすく解説
データウェアハウス(DWH)の導入が向いている企業
すべての企業にデータウェアハウスが必要というわけではありません。以下のような特徴を持つ企業で、特に高い効果が期待できます。
データ量が多い中堅・大企業
日々数万件から数十万件のトランザクションデータが発生する中堅・大企業では、データウェアハウスの効果が特に現れやすくなります。膨大なデータを効率的に統合・分析する自動化機能により、手作業では困難な大規模データの活用が可能です。
複数のシステムや拠点を運用している企業
多店舗展開する小売業や複数工場を持つ製造業など、複数拠点や多システムを運用する企業にも適しています。各拠点のPOSシステム、生産管理システム、顧客管理システムなどから発生するデータを効率的に統合し、全社横断的な分析基盤を構築できます。
経営指標をリアルタイムで把握したい企業
競争激化や市場変化の速い業界では、経営指標のリアルタイムでの把握が競争力を左右します。データウェアハウスを活用することで、売上高や利益率、在庫回転率などの重要なKPIをダッシュボードで一元監視できます。従来の月次・四半期報告では対応が後手に回りがちな状況でも、日次や週次でのデータ更新により迅速な意思決定が実現できます。
データウェアハウス(DWH)選定のポイント
データウェアハウス導入にあたっては、次のポイントを総合的に評価して選定する必要があります。
オンプレミス型かクラウド型か
オンプレミス型は自社でサーバーを保有・運用するため、セキュリティ要件が厳しい企業や既存システムとの密接な連携が必要な場合に適しています。一方、クラウド型は初期投資を抑えた短期間導入と運用負担の軽減が魅力です。
企業の規模やセキュリティポリシー、予算などに応じて自社に適した形態を選択することが重要です。
データ処理速度
大量データの集計・分析において、処理速度は業務効率に直結します。日次レポートや緊急時の分析など、迅速な結果が求められる業務では、高速処理能力を重視して選定することが重要です。
データ容量の拡張性
事業成長に伴うデータ量の増加に対応できる拡張性は、データウェアハウス選定の重要な判断基準です。後からの拡張が困難なシステムでは運用コストが膨らむリスクがあります。クラウド型では柔軟な拡張が可能ですが、オンプレミス型では初期設計段階での慎重なデータ容量の計画が不可欠です。
既存システムとの連携性
データウェアハウス導入時は、既存のシステムやデータベースとの連携性を慎重に評価する必要があります。API連携やデータフォーマットの互換性、リアルタイム同期の可否など技術的な検証が不可欠です。連携が困難な場合は追加コストも含めて総合的に判断する必要があります。
専門人材の確保
データウェアハウスの運用には、データエンジニアやアナリストなどの専門人材が必要です。社内にリソースが不足している場合は、外部パートナーとの連携や人材育成計画も並行して検討する必要があります。特に、導入から運用まで一貫したサポートを提供できるベンダーを選定することで、人材不足の課題を効果的に解決できます。
DWHでデータ活用を高度化させ意思決定を加速させよう
データウェアハウス(DWH)の導入することで、企業に散在するデータを統合でき、より精度の高い経営分析と迅速な経営判断が実現できます。データ量の多い中堅・大企業や複数システムを運用する企業では、導入効果が顕著に現れるでしょう。導入検討時は、処理速度・拡張性、既存システムとの連携性、コストを総合的に評価し、自社に適したデータウェアハウスを選択することが重要です。
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