• 2022. 08. 03
  • 税制改正ポイント

2022年度 税制改正のポイント

デロイト トーマツ税理士法人
幅 建介  /  味岡 貴英  /  石田 貴也

(3) 完全子法人株式等に係る配当等についての源泉所得税の徴収廃止

納税者・税務署の事務負担軽減の観点から、一定の内国法人が支払を受ける配当等については、所得税を課さないこととし、源泉徴収が不要とされました。 100%の株式等を直接保有している親会社、又は1/3超の株式等を直接保有している法人に対し、2023年10月1日以後に配当等を支払う場合には源泉徴収が不要となりますので、ご留意ください。

内国法人(*1)が支払を受ける配当等で次に掲げるものについて 所得税が課されないこととされる また、その配当等に係る所得税の源泉徴収も不要とされる

  • 完全子法人株式等に係る配当等
    • 株式等保有割合100%(直接保有のみ)
    • 配当等計算期間にわたる継続保有要件あり
  • 配当等の支払に係る基準日において、内国法人が直接保有する他の内国法人(*1)の株式等(*2)の保有割合が1/3超 である株式等に係る配当等で一定のもの

右記②の範囲との違いに注意

【受取配当等の益金不算入制度】
配当等の区分 益金不算入額
① 完全子法人等株式等に係る配当等
  • 株式等保有割合100%(間接保有含む)
  • 配当等計算期間にわたる継続保有要件あり
配当等の額 x 100%
② 関連法人株式等に係る配当等
  • 株式等保有割合 1/3超(*3)かつ100%未満
  • 配当等計算期間にわたる継続保有要件あり
(配当等の額 - 控除負債利子)x 100%
①、②、③のいずれにも該当しない株式等に係る配当等 配当等の額 x 50%
③ 非支配目的株式等に係る配当等
  • 株式等保有割合5%以下(*3)
配当等の額 x 20%
  • (*1) 次の法人を除く。
    • 一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を除く)
    • 人格のない社団等
    • 法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされている法人
  • (*2) 発行済株式又は出資の総数又は総額で、自己株式等は除く。
  • (*3) 令和4年4月1日以後開始事業年度については、完全支配関係のある他の法人の持分割合を含めて判定する。
適用時期
2023年10月1日以後に支払いを受けるべき配当等について適用されます。

(4) 大法人に対する法人事業税所得割の税率の見直し

法人事業税の所得割の標準税率について、現行では3未満の都道府県において事務所又は事業所を設けて事業を行う場合には、所得金額に応じた軽減税率が適用されますが、 本改正により、資本金の額が1億円超の大法人である外形標準課税適用法人について、事務所等のある都道府県の数に関わらず、以下の通り軽減税率の適用を廃止する見直しがされました。

  年400万円以下の所得 年400万円超800万円以下の所得 年800万円超の所得
改正前 0.4%
(1.44%)
0.7%
(2.52%)
1.0%
(3.6%)
改正後 1.0%
(3.6%)
  • 現行では資本金の額にかかわらず3未満の都道府県において事務所又は事業所を設けて事業を行う場合には、所得金額に応じた軽減税率が適用されたが、 本改正により外形標準課税適用法人は軽減税率の適用が廃止される
  • 括弧書は、法人事業税の所得割の標準税率に特別法人事業税(所得割標準税率×260%)を加味した税率

なお、資本金の額が1億円以下の法人(外形標準課税適用法人以外)で、事務所等のある都道府県が3未満の法人については、従前どおり一定の所得まで軽減税率が適用されます。

適用時期
2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

(5) 期限切れとなる措置の延長・見直し等

① オープンイノベーション促進税制の拡充

オープンイノベーション促進税制について、特定株式の保有見込期間及び特定勘定の益金算入期間が短縮されたほか、特別新事業開拓事業者(スタートアップ企業)の要件の拡充が行われました。 また、適用期限が2年延長されました。 (特定株式とは、産業競争力強化法に規定する特別新事業開拓事業者である一定の株式をいいます)  

適用時期
2022年4月1日から2024年3月31日までの間に取得した一定の特定株式に適用されます。

② 5G投資促進税制の見直し

5G投資促進税制について、税額控除率を含む各要件の見直しが行われました。また、適用期限が3年延長されました。

適用時期
2022年4月1日から2025年3月31日までの間に対象設備を取得し、事業の用に供した場合に適用されます。

③ 交際費等の損金不算入制度等の期限延長

交際費等の損金不算入制度についてその適用期限が2年延長されるとともに、中小企業の経済活動を支援する観点から、接待飲食費に係る損金算入の特例期限、 中小法人に係る損金算入の特例の適用期限についても、2年延長されました。 制度そのものの仕組みには変更ありません。

項目 接待交際費のうち
損金に算入できる金額
資本金の額等
100億円超 1億円超100億円以下 1億円以下
接待飲食費に係る特例 接待飲食費の50% 適用なし 適用あり 適用あり
中小法人の特例 定額控除限度額(年800万円)まで 適用なし 適用なし 選択適用
適用時期
2022年4月1日から2024年3月31日までの間に開始する各事業年度で適用されます。

④ 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度等

各制度の対象資産が見直され、対象資産から貸付けの用に供した減価償却資産が除外されました。

当該改正によれば、取得価額が10万円未満の減価償却資産であっても、貸付けの用に供した減価償却資産で使用可能期間が1年以上であるものは、通常の減価償却資産として償却することになりますので留意が必要です。

なお、貸付けであっても、リース業を営む法人のリース、企業グループの管理運営を行う親法人が子会社に対して行う事務機器等の貸付けなど、 主要な事業として行われる貸付けについては、引き続き少額資産の特例の対象となります。

その他、中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入の特例について、適用期限が2年延長されました。

項目 対象法人 対象資産 償却方法 改正案

① 少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度

内国法人 取得価額<10万円
又は使用可能期間<1年
全額損金算入
(即時償却)
対象資産から、取得価額が10 万円未満の減価償却資産のうち貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供したものが除外される

② 一括償却資産の損金算入制度

取得価額<20万円 3年間で均等償却
(残存価額なし)
対象資産から、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産が除外される

③ 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

中小企業者等(*1) 取得価額<30万円(*2)
(年300万円まで)
全額損金算入
(即時償却)
対象資産から、貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用に供した資産が除外される
※ 適用期限が2年延長される
  1. (*1) 青色申告法人で、常時使用する従業員数≦500人のものに限り、通算法人は除く。
  2. (*2) 上記①②や、他の特別償却等の適用を受けるものなど、一定のものを除く。
適用時期
上記改正は、2022年4月1日以後に取得等した資産について適用されます。

⑤ 隠蔽仮装行為に基づく確定申告書等における簿外経費の取扱い

税務調査時、証拠書類を提示せず、又は仮装して簿外経費を主張する納税者への対応として、以下の措置が設けられました。

これは、事後的な簿外経費の主張を行う悪質な納税者に対する税務当局の多大な執行コスト削減のため講じられたものです。 納税者が隠蔽仮装行為がある事業年度又は無申告の事業年度において主張する簿外経費の存在が帳簿書類等から明らかでなく、 課税当局による反面調査等によってもその簿外経費の基因となる取引が行われたと認められない場合には、その簿外経費の額を損金の額に算入できないこととされました。

区分 要件及び事由

① 対象となるケース

法人が隠蔽仮装(*1)行為に基づき確定申告書を提出している場合又は無申告の場合

② 対象となる費用等

以下の原価の額、費用の額又は損失の額(*2)で、③に掲げる場合に該当するものを除く
  • 上記①の確定申告書に係る事業年度の原価の額(販売した資産の取得に直接要した額等として政令で定める額を除く)
  • 上記①の確定申告書に係る事業年度の費用の額及び損失の額

③ 除外される要件

  • 保存する帳簿書類等により上記②の費用等の基因となる取引が行われたこと及びこれらの額が明らかである場合 (災害その他やむを得ない事情により、当該取引に係る帳簿書類の保存をすることができなかったことをその内国法人において証明した場合を含む)
  • 保存する帳簿書類等により上記②の費用等の基因となる取引の相手方が明らかである場合その他当該取引が行われたことが明らかであり、 又は推測される場合であって、税務当局の反面調査等によって、当該取引が行われ、これらの額が生じたと認める場合

④ 所得計算上の取扱い

その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない
  1. (*1) 仮装隠蔽とは、いわゆる二重帳簿の作成、帳簿書類の隠匿・虚偽記載等、証明書その他の書類を改ざんなどの事実がある場合をいう。
  2. (*2) その法人がその事業年度の確定申告書を提出していた場合には、上記②の費用等の額のうち、その提出したその事業年度の確定申告書等に記載した課税標準等の計算の基礎とされていた金額は、本措置の対象から除外される(すなわち、上記③の要件を充足しなくても従来どおり直ちに損金不算入とはならない)
適用時期
2023年1月1日以後に開始する事業年度について適用されます。