• 2020. 12. 14
  • 税制改正ポイント

2020年度 税制改正のポイント

デロイト トーマツ税理士法人
渡辺 寛己  /  旗 知満  /  杉村 友輝

1. はじめに

皆さん、こんにちは。デロイト トーマツ税理士法人です。今回は2020年度の税制改正について解説いたします。 今回の税制改正には、連結納税制度の抜本的見直しを中心として、今後の実務に影響を与える可能性のある項目が多く含まれています。 このコラムでは、改正内容のうち特に読者の皆様に関連が深く重要と思われる内容を、図や表を織り交ぜてできるだけわかりやすくご説明いたします。 税制改正に対する読者の皆様のご理解の一助となれば幸いです。

2. 2020年度 税制改正のポイント

今回の法人関連の税制改正では、連結納税制度について、事務負担の軽減等を図るため単体申告に変更するという抜本的見直しが行われました。 また、デフレ脱却と経済再生のためにオープンイノベーション促進税制が創設されるほか、賃上げや投資を促すための措置として、これらに消極的な企業に対して一定の租税特別措置の適用を停止する措置の強化や、賃上げ・投資促進税制の要件の見直しが行われました。

グローバル化したビジネスへの対応としては、子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせたスキームを効果的に防止するための措置が講じられています。

そのほか、接待飲食費に係る損金算入特例の見直し、居住用賃貸建物を取得した際の仕入税額控除の適正化、消費税の申告期限の延長、及び電子帳簿保存制度の見直しについてご説明いたします。

<目次>
  • (1) グループ通算制度
  • (2) オープンイノベーション促進税制の創設
  • (3) 租税特別措置法適用停止要件の見直し
  • (4) 賃上げ・投資促進税制要件の見直し
  • (5) 接待飲食費に係る損金算入特例の見直し
  • (6) 消費税の申告期限の延長
  • (7) 居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除の適正化
  • (8) 子会社配当と子会社株式の譲渡を組み合わせたスキーム対応
  • (9) 電子帳簿保存制度の見直し

(1) グループ通算制度

① 改正の概要とポイント

現行の連結納税制度は、2022年4月1日以後に開始する事業年度からグループ通算制度へ移行されることとなりました。 グループ通算制度では、事務負担の軽減並びに時価評価課税及び欠損金の切捨て対象の縮小を目的として、現行の連結納税制度同様にグループでの損益通算は維持した上で、申告・納税は会社ごとに行う個別申告方式へ移行されます。 なお、連結納税制度とグループ通算制度が併存することはなく、約2年の移行猶予期間を経てグループ通算制度へ統一されます。改正の概要とポイントは以下の通りです。

  改正の概要   改正のポイント
連結納税制度 グループ通算制度 影響
損益通算申告方式
  • 連結グループ内の損益を通算
  • 連結グループをひとつの納税単位として連結親法人が申告
  • 各社の事後的な課税所得または税額の修正が、グループ全体に影響する
  • 通算グループ内の損益を通算
  • 通算グループ内の各法人を納税単位として、各法人が申告
  • 各社の事後的な課税所得または税額の修正・更正は、グループ内の他の法人に影響しない
 
  • 損益通算は維持
  • 修更正時の事務負担の軽減
  • 子会社の申告誤りによるグループ内の他の法人への影響を軽減
開始時・加入時の取扱い
  • 親会社の開始前欠損金は制限なく控除可能
  • 完全支配関係5年以内等の法人は時価評価対象
  • 親会社の開始前欠損金も自社の所得内でのみ控除可能
  • 時価評価・欠損金制限対象法人の判定につき組織再編税制の考え方を取り入れた制限内容へ
 
  • 親法人における欠損金発生後に導入すると損益通算メリットが小さくなる
  • M&Aに積極的な企業も導入の余地がある
投資簿価修正離脱時の取扱い
  • 連結子法人株式の譲渡等の一定事由が生じた場合において、連結期間中の利益積立金額の増減額の帳簿価額の修正を行う
  • 通算グループ内の子法人株式評価損益・譲渡損益は不計上
  • 離脱法人株式の簿価を同法人の簿価純資産に修正
 
  • グループ法人税制や投資簿価修正を利用した含み損益の実現が不可に
グループ調整計算
  • 試験研究費・外国税額控除の上限額はグループ全体の税額で計算
  • 受取配当等の益金不算入の株式保有割合はグループで通算
  • 試験研究費・外国税額控除の上限額はグループ全体の税額で計算
  • 受取配当等の益金不算入の株式保有割合はグループ法人税制で規定
 
  • 試験研究費・外国税額控除の上限額をグループ全体の税額ベースで計算できるメリットは維持