- 2021. 08. 23
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- 税制改正
2021年度 税制改正のポイント
デロイト トーマツ税理士法人
渡辺 寛己  /  江﨑 隆一  /  旗 知満
1. はじめに
皆様、こんにちは。デロイト トーマツ税理士法人です。
今回は2021年度の税制改正について解説いたします。
今回の税制改正には、ポストコロナに向けた経済再生やデジタル化・グリーン化のための施策が盛り込まれています。
このコラムでは、改正内容のうち特に読者の皆様に関連が深く重要と思われる内容を、図や表を織り交ぜてできるだけわかりやすくご説明いたします。
税制改正に対する読者の皆様のご理解の一助となれば幸いです。
2. 2021年度 税制改正のポイント
今回の法人関連の税制改正では、デジタル化の遅れに対応するためにデジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制が創設されるほか、電子帳簿等保存制度について事前承認制度が廃止されるなどの見直しが行われました。
また、グリーン社会の実現のためにカーボンニュートラルに向けた投資促進税制が創設されました。
そのほか、繰越欠損金の控除上限の臨時措置、研究開発税制の見直し、賃上げ・投資促進税制等の見直し、大企業についての一定の租税特別措置の停止措置の延長、税務関係書類への押印義務の見直しについてご説明いたします。
- <目次>
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- (1) デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設
- (2) カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
- (3) 繰越欠損金の控除上限の臨時措置
- (4) 研究開発税制の見直し
- (5) 賃上げ・投資促進税制等の見直し
- (6) 大企業についての一定の租税特別措置の停止措置の延長
- (7) 税務関係書類への押印義務の見直し
- (8) 電子帳簿等保存制度の見直し
 
(1)	デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設
国から認定を受けた事業適応計画に基づき、クラウド型システム等の導入により事業変革デジタル設備投資を行った場合には、一定の特別償却又は税額控除が認められることとなりました。
- 事業適応とは(産業競争力強化法2⑫)
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経済社会情勢の変化に対応して、その事業の生産性向上、または商品・提供役務に係る新たな需要の開拓を目指して行う、
その事業の全部又は一部の変更であって、次のいずれかに該当するもの(取締役会等による経営方針に係る決議等を伴うものに限る)
 
- 成長発展事業適応⇒繰越欠損金の控除上限の特例 
- 情報技術事業適応:情報技術の進展による事業環境の変化に対応して行うもの
- エネルギー利用環境負荷低減事業適応⇒カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
 
| DX投資促進税制を受けるための計画認定要件 | 
| デジタル(D)要件 | 企業変革(X)要件 | 
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① データ連携・共有(他の法人等が有するデータ又は事業者がセンサー等を利用して新たに取得するデータと内部データとを合わせて連携すること)② クラウド技術の活用③ 情報処理推進機構が審査する「DX認定」の取得(レガシー回避・サイバーセキュリティ等の確保) | 
① 商品の製造原価が8.8%以上削減されること等
② 生産性向上や売上高の上昇の目標を定めること
計画期間内で、ROAが2014年~2018年平均を基準値として1.5%ポイント向上計画期間内で、売上高伸び率≧過去5年度の業種売上高伸び率+5%ポイント③ 投資総額が売上高比0.1%以上であること | 
 
 
| 対象法人 | 次のいずれにも該当する法人 
① 青色申告書を提出する法人② 産業競争力強化法21の28②に規定する認定事業適応事業者(認定事業適応計画に従って実施される情報技術事業適応を行う事業者)であるもの | 
| 措置の内容 | 
| 対象資産(※1) | 特別償却 | 税額控除 |  
| 事業適応計画に従って実施される情報技術事業適応の用に供するために新設又は増設をするソフトウエア | 30% | 3% (※2)
 |  
| 上記ソフトウェア、又はその事業適応を実施するために必要なソフトウエアとともに情報技術事業適応の用に供する機械装置及び器具備品 |  
| その情報技術業適応を実施するために必要なソフトウエアの利用に係る費用として支出し繰延資産となるもの |  
(※1)産業試験研究用資産、及び貸付けの用に供された資産を除く(※2)グループ(会社法上の親子会社関係にある会社によって構成されるグループ)外の事業者とデータ連携をする場合には5% | 
| 取得価額限度 | 対象資産の取得価額及び対象繰延資産の額の合計額として300億円が限度 | 
| 税額控除限度 | 当期の法人税額の20% (ただし、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の税額控除制度による控除税額との合計)
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- 適用時期
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産業競争力強化法の改正法の施行日から2023年3月31日までの間に取得した一定の資産に適用されます。
(2)	カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
国から認定を受けた事業認定計画に基づき、脱炭素につながる設備投資を行った場合には、一定の特別償却又は特別控除が認められることとなりました。
- 事業適応とは(産業競争力強化法2⑫)
- 
経済社会情勢の変化に対応して、その事業の生産性向上、または商品・提供役務に係る新たな需要の開拓を目指して行う、
その事業の全部又は一部の変更であって、次のいずれかに該当するもの(取締役会等による経営方針に係る決議等を伴うものに限る)
 
- 成長発展事業適応⇒繰越欠損金の控除上限の特例 
- 情報技術事業適応:情報技術の進展による事業環境の変化に対応して行うもの
- エネルギー利用環境負荷低減事業適応⇒カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
 
| 対象資産(事業適応計画に記載された下記資産) | 
| 生産工程効率化等設備 | 需要開拓商品生産設備 | 
| 生産工程の効率化によりエネルギーの利用による環境への負荷の低減に特に資する設備その他の事業適応(※)に資する設備 | エネルギーの利用による環境への負荷の低減に特に資する商品その他の事業適応(※)を行う事業者による新たな需要の開拓が見込まれる商品の生産に専ら使用される設備 | 
(※)エネルギー利用環境負荷低減事業適応に該当するものに限る。
 
 
| 対象法人 | 次のいずれにも該当する法人 
① 青色申告書を提出する法人② 改正産業競争力強化法21の16①に規定する認定事業適応事業者(エネルギー利用環境負荷低減事業適応に限る)であるもの | 
| 措置の内容 | 対象資産(※1)(※2)の取得価額の50%の特別償却、又はその取得価額の5%(※3)の税額控除との選択適用 
(※1)貸付の用に供された資産を除く(※2)取得については新規取得に限る(※3)エネルギーの利用による環境への負荷の低減に著しく資するものにあっては10% | 
| 取得価額限度 | 対象資産の取得価額の合計額として500 億円が限度 | 
| 税額控除限度 | 当期の法人税額の20% (ただし、DX投資促進税制の税額控除制度による控除税額との合計)
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- 適用時期
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産業競争力強化法の改正法の施行日から2023年3月31日までの間に取得した一定の資産に適用されます。