- 2025. 11.18
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- 業務改善・業務効率
販売管理システムと会計システムを連携させる方法とは?
注意点も解説
日々の受発注や請求処理、月次決算に追われる経理・業務部門にとって、業務効率の向上は常に直面する課題です。特に、販売管理システムと会計システムを別々に運用している場合には、データの二重入力やヒューマンエラーが発生しやすく、結果として無駄な工数やコストがかかってしまうケースも少なくありません。この問題を解消する有効な手段が、販売管理システムと会計システムの連携です。
本記事では、販売管理システムと会計システムの連携が求められる理由、メリット、具体的な連携方法、さらに導入時の注意点までを、わかりやすく解説します。
- 目次
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販売管理システムと会計システムの連携が求められる理由
まず、それぞれのシステムがどのような役割を果たしているのかを整理したうえで、連携が必要な理由を解説します。
販売管理システムの役割
販売管理システムは、受注・発注・在庫・納品・請求といった販売業務全体を一元管理するための業務支援システムです。営業部門や業務部門が主に利用し、案件の進捗管理や伝票発行、在庫数の把握などをリアルタイムで行えます。
売り上げや原価の情報を正確に把握し、他部門と連携しながら業務の流れを可視化することで、販売施策判断のスピード向上にもつながります。
会計システムの役割
会計システムは、仕訳入力・帳簿作成・決算処理・税務申告など、財務会計や管理会計に関する業務を効率化するシステムです。経理部門が日常的に使用し、会社の収益状況や費用の内訳を正確に集計・報告する役割を担います。
会計データを正確かつ迅速に処理することで、法令遵守(コンプライアンス)や経営レポートの質を支えています。
両システムの連携が必要な理由
販売管理と会計管理は日常業務で密接に関わっていますが、多くの企業では別々のシステムで運用されており、その結果、システム間に分断が生じています。これは、部門ごとに異なるシステムを導入したり、導入時期がずれたりすることが主な原因です。
そのため、販売管理で登録した売り上げデータを会計側に再入力する必要があり、手間やミスが発生しやすくなります。
経理の非効率な業務プロセスについては、「経理の無駄な作業を徹底排除!効率化のための3つの方法や成功事例を紹介」で詳しく解説しています。
さらに、経営判断に必要なデータをリアルタイムで把握できないため、報告や分析の精度にも影響が及ぶことがあります。
こうした課題を解決するためには、販売管理システムと会計システムを連携させ、データを一元的に管理することが重要です。
部門別のデータが分断された状態である「サイロ化」について「サイロ化とは?発生する原因や問題、解消するための方法をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
販売管理システムと会計システムを連携させるメリット
販売管理システムと会計システムを連携することで、次のメリットが得られます。
業務効率の改善
販売から会計へのデータ連携が自動化されることで、手作業による二重入力が不要となり、作業工数の削減や処理スピードの向上が期待できます。受注から売り上げ計上、請求、仕訳までを一貫して処理できるようになり、業務全体がスムーズに流れるようになるでしょう。
こうした効率化は、決算業務の早期化にもつながります。
決算早期化については、「決算早期化が求められる背景とメリットとは?ボトルネックや解決方法を解説」で詳しく解説しています。
ヒューマンエラーの削減
データの自動連携により、手入力の回数が大幅に減少し、入力ミスや記載漏れといったヒューマンエラーのリスクが低減されます。帳簿の精度が高まることで、監査対応や税務申告にも安心して臨むことが可能です。
また、正確なデータが蓄積されることで、後工程の分析や報告もスムーズになるでしょう。
情報の一元化による経営判断の迅速化
販売情報と会計情報がリアルタイムで統合されることにより、データの一元管理が可能になります。経営に必要な判断材料を迅速に得られ、意思決定のスピードアップにつながるでしょう。
こうした仕組みは、データに基づいた意思決定、いわゆるデータドリブン経営を実現するうえで欠かせません。
データの一元管理やデータドリブン経営については、下記の記事で詳しく解説しています。
販売管理システム・会計システム連携の3つの方法
販売管理システムと会計システムを連携させる方法には複数の選択肢があり、自社の状況に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。ここでは、代表的な3つの連携手法を解説します。
API連携
API連携は、異なるシステム間でリアルタイムにデータをやり取りできる、高度な連携手法です。例えば、販売管理システムで受注登録された情報が、そのまま会計システムの仕訳に即時反映されるといった処理が可能になります。
この方式を採用するには、販売管理・会計システムの双方がAPI連携に対応していることが前提です。すべてのシステムがAPI連携に対応しているわけではなく、特にオンプレミス型やパッケージ製品では未対応の場合もあります。
そのため、API連携を前提とする場合は、連携対象のシステムがどのようなAPI仕様を持っているか、どの項目に対応しているかを事前に確認しておくことが欠かせません。開発リソースや技術的知見が必要なため、社内の技術体制を踏まえた判断が欠かせません。
CSVファイル連携
CSVファイルを使った連携は、販売管理システムから出力したデータを、会計システムに取り込む方式です。比較的導入が容易で、既存の運用を大きく変えずにすむ点が特徴です。
ただし、CSVファイルの出力・加工・アップロードといった処理は、手作業になりがちで担当者の工数やヒューマンエラーのリスクが伴います。そのため、完全な自動化を目指す場合は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)との組み合わせを検討する必要があります。
RPAについては、「RPAで経理・会計業務の効率化を!導入メリットや活用のポイントを紹介」で詳しく解説しています。
中間ツール連携
APIやCSV連携が難しいケース、あるいは複数システムを横断して連携させたい場合には、「中間ツール」を活用する方法があります。中間ツールは、販売管理システムと会計システムの間に入って、データの変換や制御を担う「橋渡し役」として機能します。
代表的な方式として、以下の2つがよく使われています。
ETL(Extract, Transform, Load)
データの抽出・変換・蓄積を行い、大量データをまとめて一括処理できるツールです。主にBIツールやDWHで活用され、データ分析やレポーティングを支えます。
EAI(Enterprise Application Integration)
企業内の異なる業務アプリケーションをリアルタイムで連携し、プロセスの自動化・最適化を行います。
中間ツールを使った連携は、業務の複雑さや将来的なシステム拡張にも対応しやすい反面、導入には専門的な知識や初期コストが必要となります。採用に当たっては、自社のシステム環境や運用体制に応じた検討が必要です。
EAIやETLなどデータ連携ツールについては、「EAIとは?仕組みや機能からETLとの違い、選定のポイントまでわかりやすく解説」「データ連携ツールとは?機能や種類、選定時のポイントをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
販売管理システム・会計システムの連携における注意点
販売管理と会計の連携を検討する際には、既存システムに連携を合わせるケースもあれば、システム自体をリプレイスして最適化するケースもあるでしょう。いずれの場合でも、以下の点に注意してください。
自社に合った連携方式の見極め
システム連携には、API連携・CSV連携・中間ツールなど複数の方法がありますが、自社の業務フローやIT体制に適した方式を選ぶことが重要です。
例えば、IT部門のリソースが限られている企業ではCSV連携とRPAの組み合わせが現実的な選択肢です。一方、大量のデータを扱い業務プロセスが複雑な企業には、ETLツールによる連携が効率的でしょう。また、開発体制が整っており、リアルタイム性を重視する業務では、API連携が適切な解決策となります。
セキュリティ対策の確認
システム連携では、機密性の高い取引情報や売り上げデータが複数のシステム間でやり取りされるため、情報漏洩や不正アクセスを防ぐセキュリティ対策が不可欠です。
暗号化・アクセス制御・操作ログ・バックアップといった基本的なセキュリティ機能が適切に整備されているかを必ず確認しましょう。特に複数ベンダーのシステムを組み合わせる場合は、セキュリティインシデント発生時の管理責任の所在を事前に明確化しておくことが重要です。
サポート体制の信頼性
連携設定や不具合発生時に、ベンダーがどこまで支援してくれるかは重要な判断材料です。導入前には、マニュアルの充実度、問い合わせ対応の体制、設定支援サービスの範囲などを確認しておきましょう。
さらに、税制改正や電子帳簿保存法対応といった制度変更に対するアップデート実績や対応方針も、システムを長期利用するうえでは見逃せないポイントです。
販売管理・会計システムの連携は自社に合った方法を見極めることが重要
販売管理システムと会計システムの連携は、業務の効率化はもちろん、経営判断のスピードを高めるうえでも多くのメリットがあります。連携にはいくつかの方法があるため、注意点を考慮したうえ自社に合った方法を選び進める必要があります。
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システム間のデータ連携にお悩みの際は、ぜひ一度、ICSパートナーズへご相談ください。