• 2023. 12. 06
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国際会計基準(IFRS)と日本基準との違いとは?
導入ポイントまで解説!

国際会計基準(IFRS)と日本基準との違いとは?導入ポイントまで解説!

主要な経済先進国には、自国の法律や歴史・経済環境にあった独自の会計基準があります。国を超えて事業を展開するグローバル企業が台頭してきた現在、それに伴い資金調達の需要も増加しています。自国企業だけではなく、他国企業にまで投資先の選択肢が広がれば、投資家にとっても投資効率の向上につながるかもしれません。

投資判断で重要な役割を果たす財務諸表ですが、その作成ルールとなる会計基準に差異があると、正確な比較が困難になります。そのため、国際的に統一されたルールとして、IFRS(イファース/アイエフアールエス)が誕生しました。日本でも、グローバルにビジネスを展開する企業のうちの262社(2023年8月末現在)と、上場企業の約6.7%が適用しています。

そこで今回は、国際会計基準(IFRS)と日本基準との違いから導入ポイントまでを解説します。

目次

国際会計基準(IFRS)の概要

IFRSは「International Financial Reporting Standards」の略で、国際財務報告基準と訳されることもあります。1973年にヨーロッパで誕生し、IASBと呼ばれる国際会計基準審議会が、世界共通となる会計基準を目指して発展させてきました。

2005年にEU域内の上場企業に適用が義務化されて以降、オーストラリアをはじめ多くの先進国で導入されたものの、いまだに一部の国では任意適用となっています。

国際会計基準(IFRS)と日本会計基準との違い

日本の会計基準は、「企業会計原則」をベースに企業会計基準委員会が作成した日本独自の基準です。グローバル基準とされる国際会計基準(IFRS)とは、主に以下の点で違いがみられます。

財務報告に関するルールの違い

IFRSは、基本的な会計原則のみを明確にし、細かい数値や判断の基準は設けない「原則主義(プリンシプル・ベース)」に基づくものです。

世界中で使われることを前提に作成されているため、法制度や商習慣が異なっても対応できるよう、具体的な解釈や運用は現場判断に任せるという考え方が採用されています。表示方法にも細かい規定がない分、解釈の根拠を明示するために大量の注記が必要です。

一方、日本の会計基準は、詳細で具体的な規定や数値基準が定められている「細則主義(ルール・ベース)」に基づいています。財務諸表に示すべき内容については、ひな型や数値基準など細かい決まりがあるため、注記は少なめです。

企業価値に対する考え方の違い

IFRSでは、「資産負債アプローチ」で利益を算出します。資産から負債を差し引いた純資産の増減額を利益(または損失)と考え、重視するものです。ここで認識された利益は、「包括利益」と呼ばれます。

日本の会計基準は、収益から費用を差し引いた利益を重視する「収益・費用アプローチ」を採用しています。計上された純利益の結果、純資産が増加するという考え方です。また、当期利益だけでなく、含み損益も表わすことで、為替変動や株式変動といった市場リスクも財務諸表に反映します。

連結財務諸表の捉え方の違い

IFRSは、親会社も子会社も経済的に単一体であるという「経済的単一体説」の立場をとるものです。連結財務諸表は、親会社だけでなく子会社を含むすべての株主のためにも作成されるべきだと考えられています。

一方の日本の会計基準は、子会社を親会社が支配しているとする「親会社説」の立場に立つものです。連結財務諸表は、経営を支配している親会社の株主のために作成されるべきだと考えられています。

日本でもIFRSを踏まえた新基準が適用に

日本では、2021年4月以降の事業年度から「収益認識に関する新しい会計基準」(新収益認識基準)が強制適用になりました。これはIFRSを踏まえた新基準であり、つまり、日本の会計基準においてもIFRS同等の収益認識基準が適用されるようになったということを示しています。

上記は、公認会計士の会計監査を受ける会社や上場企業、大企業だけでなく、任意で会計士の会計監査を受ける企業(上場準備を行っている企業など)も適用対象です。

国際会計基準(IFRS)を導入する3つのメリット

国際会計基準(IFRS)を導入することで得られるメリットは、主に以下の3点です。

1. 海外子会社を管理しやすい

IFRSを導入すると、異なる国にある子会社でも同じ基準で管理・比較できるようになります。業績比較を正確に把握できるため、子会社間の違いもより浮き彫りになるでしょう。

2. より正確に財務情報を把握できる

収益の認識や有給休暇の引当金、のれんの処理などにおいて、IFRSの方が日本基準より正確に実態を把握できるといわれています。より正確に財務情報を比較できれば、運営方針を決定する際にも有益です。

3. 資金調達や組織編成の幅が広がる

IFRSは世界標準であるため、財務諸表を海外の会計基準に書き換えずともそのまま使用できます。世界の投資家や他企業から比較検討の対象となることで、海外からの資金調達や異国籍企業との組織再編の可能性が高まります。

国際会計基準(IFRS)導入にはデメリットも

特にグローバル企業にとってはメリットのある国際会計基準(IFRS)ですが、デメリットも存在します。導入を検討する際には、以下もあわせて理解しておきましょう。

導入にコストや時間、労力を要する

会計基準の変更に伴ってシステムや運用方法も変わるため、担当者への教育や研修などが必須です。

また、IFRSは基準解釈が企業任せであるため考慮すべき事項も多く、導入には十分な検討を要するでしょう。さらに、海外市場に上場する場合には、英語表記の財務諸表が求められるため、これらに対応し得る人材も育成・確保しなければなりません。

事務負担が増加する

IFRSを導入すると、資産・負債の範囲が広がるうえに資産を時価で評価し直さなければならず、注記も増えることとなります。さらに、IFRS適用企業であっても会社法上は日本基準での開示が求められるため、複数帳簿を準備しなければなりません。

導入に合わせて新しいルールやマニュアルの整備も必要となることから、事務負担の増加は避けられないでしょう。

国際会計基準(IFRS)導入をスムーズに進めるポイントは?

国際会計基準(IFRS)をスムーズに導入するためには、次の4点がポイントになるでしょう。

ポイント1. 早めに着手すること

実際にすでにIFRSを導入した企業をみてみると、数年にまたがって準備を進めたケースが少なくありません。会計方針そのものが変わるということは、会社の経営管理にも影響を及ぼすということです。導入するタイミングを見極めて、早めに着手することがカギとなります。

ポイント2. 専門部署を設置すること

意思決定を行うための管理会計においては、今のKPIのままでは経営管理が機能しなくなる可能性があります。KPIが変わる場合、既存システムの要件変更が必要となるでしょう。

実務では、過年度と適用後では収益認識基準が異なるため、純粋な対比ができなくなってしまいます。また、次年度の予算についても新基準で作成しなければなりません。さらに、導入初年度は、比較のために前期を含めた2期分の財務諸表の開示が求められます。

上記を考慮すると、IFRS導入前後には専門部署を設置するのがベターでしょう。

ポイント3. 従業員への周知・教育を徹底すること

新収益認識基準は売上に関わる会計基準であるため、経理部門だけでなくフロントオフィスの従業員への教育も必要でしょう。周知されていなければ、会計方針に相違が生まれ、業績を正確に把握できません。全社的に知識を深め、新たな業務内容やルールなどの周知を徹底することが大切です。

ポイント4. 国際会計基準(IFRS)に適応したシステム・ツールを導入すること

IFRSの導入準備は複雑で大がかりであるため、取り組み全体をサポート可能なシステム・ツールの活用が不可欠です。企業規模や業種に応じて、自社に適したシステム・ツールの導入を検討しましょう。

早めの準備で国際会計基準(IFRS)の導入を成功させよう!

国際会計基準(IFRS)は、今後日本においても導入が進むとみられている世界基準の会計基準です。財務報告に関するルールや企業価値に対する考え方、連結財務諸表の捉え方などで日本基準との違いがあるため、しっかりと理解しなければなりません。

IFRSの導入や運用には高い専門性が求められるため、取り組み全体をサポートし得るシステム・ツールの利用がおすすめです。この機会に、自社に合ったシステム・ツール探しから始めてみてはいかがでしょうか。