• 2023. 07. 04
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連結会計とは?基礎知識から連結財務諸表の作成手順、
注意点まで徹底解説

連結会計とは?基礎知識から連結財務諸表の作成手順、注意点まで徹底解説

連結会計とは、大企業がグループ全体をひとつの組織とみなし、経営状況を報告するための会計手法です。上場企業ならびに一部の非上場企業には、「連結財務諸表」の作成が義務付けられています。連結会計は、経理業務のなかでも難しい実務のひとつだといわれます。しかし、順を追って丁寧に理解を進めれば、内容は意外にシンプルです。

そこで今回は、連結会計の概要や連結財務諸表の作成手順などを詳しく解説します。

目次

連結会計とは

連結会計とは、親企業のみならず、国内外で展開する子会社および関連会社を含めたグループ全体をひとつの組織とみなして決算を行うための会計手法のことです。

連結会計の概要

連結会計の目的は、企業グループ全体の財務・経営状況を正確に把握することです。

親企業・子会社それぞれの単独会計には、グループ内での取引も反映されます。こうした親子間での取引を除外することで、グループ全体の状況を正しく知ろうとするのが連結会計です。

ただし、子会社を持つ親企業のすべてが、必ずしも実施するわけではありません。連結会計が義務付けられているのは、上場企業と一部の非上場企業(資本金が5億円以上、もしくは負債が200億円以上の大会社)です。

どこまでが連結対象の範囲か

連結決算では原則として、すべての子会社や関連会社を連結範囲に含めなければなりません。しかし、小規模子会社を数多く抱えているような企業では、事実上困難です。そこで、規模が小さく重要性が低い子会社や関連会社は除外可能とされています。

子会社は、次のいずれかに該当するものと定義されています。


1.過半数の議決権を保有している

2.議決権の40~50%を保有し、緊密者や同意者、役員関係が一定の条件を満たしている

3.議決権の0~40%を保有し、緊密者や同意者が過半数おり、役員関係が一定の条件を満たしている


上記のうち、「重要性の高い子会社」が連結の対象です。

重要性は資産や売上、利益といった「量的基準」と、経営戦略における位置づけや役割といった「質的基準」の2点から判断されます。具体的な基準が示されているわけではないため、判断は各企業に委ねられてはいますが、会計監査を導入している場合は、担当監査法人等と協議して決めるのが一般的です。

連結財務諸表とは

連結財務諸表は、連結決算の対象となる会社をすべてまとめてひとつの会社とみなし、作成する財務諸表です。親企業によって作成されるのが一般的で、各子会社単独の個別財務諸表を合算し、親子間での取引や賃借を相殺することで、グループとしての正確な財務状況を表します。

連結財務諸表が重視される理由

連結財務諸表が重視される理由には、以下の2点が挙げられます。


  • グループ全体の財務・経営状況を正確に把握できるから
    グループ内で製造や販売などを役割分担しているケースでは、個別財務諸表からグループ全体の実態を把握する事は難しいです。その点連結財務諸表であれば、正確な全体像を掴むことが可能です。その正確さゆえに、投資家が銘柄を選択する際や、金融機関が融資を判断するときにも活用されます。

  • 不正会計を防げるから
    グループ内取引を相殺すると、親企業の損失を子会社へ移すことや、グループ内での循環取引によって親企業の経営状況をよくみせる「利益の不正操作」などは意味をなさなくなります。

連結財務諸表を構成する4つの要素

連結財務諸表は、次の4つの要素から構成されています。


1.連結貸借対照表
企業グループ全体の財務状況を表すものです。資産・負債・純資産が記載されます。


2.連結損益計算書
企業グループ全体の経営成績を表すものです。収益・費用・利益が記載されます。


3.連結キャッシュフロー計算書
企業グループ全体の収支の状況を表すものです。会計期間における現金の動き(キャッシュフロー)が、営業・投資・財務の各活動で区分されて表示されます。
作成方法には、原則法(親企業と子会社の個別キャッシュフロー計算書を合算後、グループ間取引等を相殺消去して作成)と簡便法(連結貸借対照表と連結損益計算書から作成)とがありますが、後者が一般的です。


4.連結株主資本等変動計算書
純資産が変動した事由を報告するものです。前期末残高・当期変動額・変動事由・当期末残高が記載されます。

連結決算の手順

実際の連結決算の手順や流れも確認しておきましょう。

1. グループ内各企業で個別財務諸表を作成する

まずは、各企業にて個別財務諸表を作成します。連結決算の際に整合性が保たれるよう、グループ内で会計方針を統一しておく点がポイントです。

2. 個別財務諸表を合算する

親企業は、連結対象子会社から個別財務諸表を入手し、合算します。ここで、グループ内での勘定科目統一や外貨の円換算、決算期のずれの調整などを行います。子会社の決算日と連結決算日がずれている場合、3ヶ月以内であればそのまま連結可能です。3ヶ月を超える場合には、連結決算日に仮決算を実施します。

3. 連結修正仕訳を行う

集めた個別財務諸表を合算しただけでは、グループ内取引の状況も含まれてしまうため、相殺しなければなりません。この作業が「連結修正仕訳」です。連結修正仕訳の手順については、後ほど詳しく解説します。

4. 連結財務諸表を作成する

修正仕訳をもとに連結精算表を作成し、連結財務諸表を完成させるのが一般的な流れです。作成された連結財務諸表は、外部にも公開される資料となります。

連結修正仕訳の流れ

連結修正仕訳は基本的に帳簿外の会計業務であるため、翌年以降の個別財務諸表には反映されません。そこで、まずは事業年度ごとに、過年度の連結修正仕訳を仕訳し直す(開始仕訳)必要があります。

また、修正仕訳の内容は、「資本連結」と「成果連結」に大別されます。それぞれ詳しくみていきましょう。

資本連結

資本連結は、「親企業の投資(子会社株式)」と「子会社株式の株主資本」を相殺する仕訳です。さらに、相殺によって生じた差額は、「のれん」として振替計上します。

のれんの償却は、発生後20年以内に定額法で償却されるのが一般的です。

ほかにも、資本連結では以下のような仕訳が行われます。


  • 子会社の資産および負債の時価評価
    支配獲得日の時価によって評価替えを行います。生じた差額は「評価差額」として処理します。

  • 子会社当期純損益の振替
    親企業に帰属しない子会社当期純損益を、親企業以外の株主に「非支配株主持分」として振り替えます。

  • 配当金の修正
    子会社が親企業へ配当金を支払った場合は相殺、非支配株主へ支払ったものは「非支配株主持分当期変動額」へ振り替えます。

成果連結

成果連結は、グループ内の取引を相殺消去する仕訳です。内部取引高・債権債務といった内部取引を相殺消去することで、グループ外部に対する損益や債権・債務だけを計上できます。

ほかにも、成果連結では以下のような仕訳が行われます。


  • 貸倒引当金の修正
    グループ間の取引に貸倒引当金が設定してある場合、内部取引の相殺消去にあわせ、修正仕訳で取り消します。

  • 棚卸資産や固定資産の未実現損益の消去
    グループ内の棚卸資産や固定資産売買によって発生した損益は、グループ外部への売却が実現するまでは未実現損益として残るため、修正仕訳で消去します。

連結決算の注意点

スムーズな連結決算のために押さえておきたいポイントは、以下の2つです。

グループ内取引の管理体制

連結対象となる子会社が多ければ多いほど、連結修正仕訳の件数も増えていきます。連結決算の時期になって業務を確認していたのでは、処理が追いつかなかったり、ミスが頻発したりするおそれがあります。

日頃からグループ内の情報共有に努め、経理担当者の教育を徹底しておくとよいでしょう。

情報開示期限に注意!

連結決算の情報開示には、期日が設けられています。上場企業は、決算日から45日以内に開示しなければなりません。期日までに連結財務諸表を完成させられるよう、グループ全体のスケジュールを調整・管理しておくことが重要です。

正確な連結会計でグループ全体の健全経営と発展を実現しよう

連結会計は、企業グループ全体の財務・経営状況を正確に把握できる会計です。健全な企業活動のためには、欠かせない存在だといえるでしょう。親企業が連結財務諸表を作成する際には、個別財務諸表をただ合算するだけでなく、グループ内取引の相殺や未実現損益の消去といった連結修正を実施する必要があります。子会社の数が多くなるほど、処理すべき量も増えますが、処理の流れはシンプルです。円滑に進めるためにも、日ごろからグループ内で情報を共有しやすい環境を整備しておくことが重要です。近年では、連結会計をサポートするシステムも多数登場してきています。積極的に活用し、グループのさらなる発展を目指しましょう。