• 2023. 08. 25
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売上分析とは?
目的やメリットから手法、ツールまでわかりやすく解説

売上分析とは?目的やメリットから手法、ツールまでわかりやすく解説

売上分析は、自社の販売実績や収益等について、さまざまな手法を使って多角的に把握する業務です。売上に関わるデータには、多くの経営に役立つヒントが潜んでいます。分析の重要性は理解していても、方法やフレームワークがわからないために一歩を踏み出せていないという人もいるでしょう。

そこで本記事では、売上分析の概要やメリットから手法、活用できるツールまで解説します。

目次

売上分析とは

売上分析は、自社の本業における課題や傾向を把握するための最も重要なプロセスです。自社の販売実績や収益などのデータを多角的に分析することで、課題や傾向を把握し、目標達成のための施策につなげられます。

分析のためにデータを細分化する際には、商品別・営業所別・部門別・担当者別・チャンネル別・顧客別といった指標が用いられることが多いでしょう。指標ごとに細分化した売上を、任意の期間ごとに比較して分析します。

比較対象には、前年同月のデータや競合他社の売上などが挙げられます。

売上分析の目的

売上分析は、詳細な分析で的確に現状を把握するだけにとどまりません。分析結果を基に具体的な目標を設定し、売上を拡大させる施策を講じるまでが目的に含まれます。分析して満足してしまうケースや分析するだけで対策につなげられないケースに要注意です。分析し、その結果を活用しようとする視点が重要です。

売上分析がもたらす5つのメリット

売上分析を行うことで期待できるメリットは、主に以下の5つです。

1. 収益性の高い商品や顧客を把握できる

売上分析によって情報が細分化されると、どの商品・サービス・顧客が売上高や利益率が高いものなのかといった状況がみえてきます。

ビジネスにおいては、「売上の8割は全顧客のなかの2割によって生み出されている」「商品の売上の8割は全商品の2割の売れ筋商品で成り立っている」という「パレートの法則」があります。これに従えば、収益性が高い商材や顧客にリソースを集中させれば、効率的に売上拡大が目指せるということです。

主力の顧客層や商品を見極めることで、有効な販売戦略が立てられるでしょう。

2. 市場のニーズや動向がわかる

売上分析の結果からは、どのような顧客にどんな商品・サービスが売れているのかといったことも確認できます。 市場のニーズや動向が把握できると、それに基づいたペルソナ設定や経営戦略・事業計画の策定が可能になります。

3. 販促活動の効果を確認できる

売上分析の結果からは、セールや広告といった販促活動の成果がどれくらいあったかもわかります。販促活動に対する実績(効果)が確認できれば、今後強化すべき点や見直すべきところが明確化でき、より効率的に販促活動が展開できるようになるでしょう。

不要な施策を手放すことによるコスト削減効果も見込めます。

4. 売上予測の精度を高められる

売上分析によって過去の売上実績の変動や市場動向、顧客ニーズなどが詳細に把握できるようになると、今後の予測精度も上がります。予測と実測の差異幅を減少できれば、余剰在庫や発注不足といったリスクの回避にもつながります。

5. 営業担当者のモチベーション向上につながる

売上を伸ばしたいからとやみくもに売上や受注率のアップを指示しても、営業担当者の士気は上がりません。人間の心理として、根拠があり頑張れば手が届くレベルの的確な目標を示されたときに、「達成したい」という気持ちを抱くものです。

適切な目標値を設定して営業担当者のモチベーションが上がれば、生産性の向上につながるだけでなく、職場の活性化にもつながるでしょう。結果として離職率の低下も望めるかもしれません。

売上分析に使える主な手法

売上分析には、さまざまな手法やフレームワークが用いられています。ここでは、企業でよく使われているものをピックアップして紹介します。

ABC分析

ABC分析は、前述のパレートの法則をベースに「さまざまな事象は決して平均的でなく、偏りがある」という考えのもと、商材を売上に対する貢献度でグループ分けする手法です。重点分析とも呼ばれています。

例えば、累積で70%までの売上を占めるものをA群、70〜95%までをB群、それ以外をC群として分類します。そのうえで、A群が売れ筋、Cが売上貢献度の低い商品というように優先度を決めるのです。重視すべき商品グループを見極めることから、適切な販売戦略の立案や営業活動の効率化に生かせます。

アソシエーション分析

アソシエーション分析は物事の関連性を分析する手法です。売上分析では、商品同士の関連性を見つける際に使われることが多い傾向にあります。

アソシエーション分析では、顧客の購買実績からは一見関係のないように思える商品同士の関連性を見出せるのが特徴です。有名な例には、「おむつとビールがセットで買われる」「パンとバターを買った人は、ミルクも購入している」といったものが挙げられます。

店内やカタログにおける商品の配置・掲載場所を決める重要な情報となるものです。

デシル分析

デシル分析は、全顧客を商品の購入金額順に10等分し、各グループの購買データを分析する手法です。各グループの購入比率や売上頻度等を算出し、優先的にアプローチすべき「売上への貢献度が高い顧客層」を把握します。効率的な営業計画の策定に貢献するとして、よく活用されています。

重回帰分析

重回帰分析は、成果(目的変数)に影響すると考えられる要素(説明変数)を挙げ、目的変数に対してどの説明変数がどのくらい影響しているのかを分析する手法です。例えば、目的変数を「売上」に設定した場合、説明変数である「顧客数」「受注数」「顧客単価」「販売チャネル」などをそれぞれ分析することで、売上に影響したものは何かを突き止められます。

目的変数を「来期の売上金額」とすることで、売上予測にも活用可能です。

RFM分析

RFM分析は、「Recency(最新購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(累計購入金額)」の3つの指標によって顧客をランク付けする手法です。3つの軸で顧客を分析することで、現状の施策の有効性や改善策を把握できます。

例えば、最終購入日から時間が経っており最後に使った金額も少ない顧客は、自社の商品から興味が逸れている(休眠顧客)になっている可能性が高いと考えられるため、興味を引くだけの施策が求められます。このように、分析によって重視すべき顧客がわかるだけでなく、個別の対策を考える際にも有効です。

売上分析を効果的に行えるツール4選

手計算には人的ミスのおそれもあるため、売上データを集計・分析する際にはツールの利用がおすすめです。ここでは、効率的に売上分析を行える4つのツールを紹介します。

1. Excel

Microsoft社が提供する表計算ソフトウェアであるExcelは、すでに多くの企業で導入・活用されているため、幅広い人に対応しやすいツールです。

表や項目の設定・追加が簡単で、ピポットテーブルを使えば簡単にデータ集計もできます。ただし、大量のデータ処理には適さない、手入力・手動集計で作業が属人化しがち、他者との同時編集が難しいなどの点を考慮すると、大企業には向いていないといえるでしょう。

2. SFA / CRM

SFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)も、売上分析に活用可能です。顧客情報や購入履歴・営業履歴などの細かいデータを蓄積できるため、多角的な分析が叶います。レポーティング機能を使えば、簡単に図表化・グラフ化ができる点もポイントです。

3. BIツール

BIツール(ビジネス・インテリジェンスツール)は、企業の膨大なデータから必要な情報を抽出したり、分析したりできるもので、経営分析にも利用されるツールです。売上分析に必要な機能はすべて備わっており、作業の自動化によって工数の削減も期待できます。

4.売上管理システム

売上管理システムは、売上管理に特化しており、見積や受注情報も含めて売上分析データを組織内で共有、一元管理ができるツール・システムです。通常、請求書の発行入金確認などさまざまな機能があり、売上分析機能も備えています。

精度の高い売上分析で、効率的に売上拡大を目指そう

売上分析によって自社の課題や傾向を正確に把握できると、適切な目標設定ができ、効率的に売上拡大を目指すための経営戦略が立てられます。多角的な分析によって、これまで気づかなかった自社の姿が見えてくるでしょう。ただし、さまざまな手法があるうえに、目的に応じて複数を使い分ける必要もあるため、上手にツールを活用しながらの推進をおすすめします。ツールを取り入れることで、売上分析を成功させましょう。