1. 品目マスタとBOMの設定例
前回のBOMの設定の図で使用した品目マスタの設定例を説明します。
製品Aの品目マスタと半製品Bについての原価計算に関する主要な設定は、以下になります。
- 棚卸資産の評価方法は、標準原価法
- 在庫の補充方法は、製造をして補充
- 製品Aには、BOM甲、作業手順a
- 半製品B には、BOM乙、作業手順b
原材料①、②、③についての原価計算に関する主要な設定は、以下になります。
- 棚卸資産の評価方法は、標準原価法
- 原価の情報として標準単価 原材料①1000円②2000円③3000円
- 在庫の補充方法は、仕入をして補充
- BOM甲の設定は、半製品Bの1個と原材料①の2個から製造されるという内容
- BOM乙の設定は、原材料②の10個と原材料③の5個から製造されるという内容
製品A・半製品Bと原材料①・②・③の違いは、前者は、BOMと作業手順を使用して原材料等を投入して製造するのに対して、原材料①、②、③は、標準単価を設定して外部から仕入をするという設定内容です。
上記でご紹介した設定内容を以下に記載します。
マスタの設定
- <補足説明>
-
製品A、半製品B、原材料①、②、③の品目マスタで棚卸資産の評価方法を標準原価で設定
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原材料①、②、③の品目マスタに標準単価をそれぞれ1,000円、2,000円、3,000円に設定
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製品A、半製品Bの品目マスタの標準単価は、積上計算をするということに設定
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製品Aの品目マスタにBOM甲と作業手順aの設定
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半製品Bの品目マスタにBOM乙と作業手bの設定
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BOM 甲、乙の設定
3. 製品Aの積上計算と半製品Bの積上計算
まず、半製品Bの積上計算から説明します。
材料費の計算は、以下になります。
原材料②が10個、単価2,000円と原材料③が5個、単価3,000円ですので、
材料費=10×2,000+5×3,000=35,000
加工費の計算は、以下になります。
作業区④が4時間、4,000円、作業区⑤が5時間、5,000円、作業区⑥が6時間、6,000円ですので、
加工費=4×4,000+5×5,000+6×6,000=77,000
少し補足しますと作業区④の4時間とは、人の作業による作業時間、機械を使用しての作業時間を表しています。
一方、4,000円とは、人の作業による作業時間、機械を使用しての作業時間の時間当たりの単価を表しています。
実際には、作業区④には、人による作業と機械による作業がある場合、それぞれ作業時間と作業単価が異なることがありますし、作業する方が複数人おり、それぞれ異なる単価、作業時間がある場合があります。
ここでは、それらの差異を取捨しています。
半製品B標準原価合計=35,000+77,000=112,000
次に、製品Aの積上計算をします。
材料費の計算は、以下になります。
半製品Bが1個、単価112,000円、原材料①が2個、1,000円ですので、
材料費=1×112,000+2×1,000=114,000
加工費の計算は、以下になります。
作業区①が1時間、1,000円、作業区②が2時間、2,000円、作業区③が3時間、3,000円ですので、
加工費=1×1,000+2×2,000+3×3,000=14,000
製品A標準原価合計=114,000+14,000=128,000
上記より製品Aの標準原価は、128,000円、半製品Bの標準原価は、112,000円になります。
4. 標準原価の積上計算
ERPの標準原価の積上計算の内容は、如何でしたでしょうか。標準原価を計算するための単価と数量が関連するマスタに設定されている、ということだけもご認識いただけますと幸いです。
今回の標準原価の積上計算は、単純なケースでしたが、実務上は、BOMの階層が50以上になるケースもあります。また、外注加工をするケースもありますが、今回は、外注加工のケースは、含めておりません。
また、生産形態も組立生産、プロセス生産等があります。
組立生産とは、個々の部品を組み立て生産することです。一方、プロセス生産とは、化学薬品、医薬品、飲料等の製造に使用されて、原材料を連続的または一括して組み合わせたり、精製したりすることです。
プロセス生産の場合、以下のケースがあります。
投入した材料が製造中に蒸発したり、切れ端が出たりして歩留り率を考慮した材料費計算をすることが必要になります。
また、ある製造工程で投入した原材料をその製造工程、あるいは別の製造工程に再投入して使用するケースがあり原価計算をする上での論点となります。
プロセス生産では、プロセス生産特有の論点がありますので、ERP製品の種類によりますが、組立生産とプロセス生産では、それぞれの生産形態に対応した生産管理システム、原価計算システムを持っているものがあります。