• 2023. 07. 24
  • インボイス   
  • 業務改善・業務効率

電子インボイスとは?
概要から「Peppol(ペポル)」まで徹底解説

電子インボイスとは?概要から「Peppol(ペポル)」まで徹底解説

企業の経理担当者がこれから迎える大きな節目のひとつに、2023年10月1日から施行されるインボイス制度が挙げられるでしょう。適格請求書(インボイス)を電子化したデータである「電子インボイス」への関心も、高まりをみせています。

本記事では、電子インボイスの概要から、インボイス制度の開始に向けて求められる対応、電子インボイスの標準仕様となる「Peppol(ペポル)」についてまで、わかりやすく解説します。

目次

電子インボイスとは

電子インボイスとは、適格請求書(インボイス)を電子化した「データ」、もしくはデータをやり取りする枠組みや仕様のことです。

2023年10月1日から導入されるインボイス制度において仕入税額控除の適用を受けるためには、消費税の適用税率や消費税額を正確に記した請求書である適格請求書が必要です。

電子インボイスの場合、具体的には以下のような電子取引で交付された適格請求書(電子インボイス)が該当します。

  • 光ディスクや磁気テープといった記録用媒体による交付
  • EDI取引による交付
  • 電子メールによる交付
  • インターネットサイトを通じた交付

インボイス制度(適格請求書等保存方式)

仕入時に支払った消費税を控除できる仕入税額控除という制度がありますが、仕入税額控除における認定要件のひとつに「請求書等の保存」が求められます。この請求書の保存形式が、現行の区分記載請求書から適格請求書に変わることが、インボイス制度が経営に及ぼす大きな影響です。

電子インボイスの普及が推進される理由

デジタル庁は、電子データと紙が混在していることによってバックオフィス業務の効率が上がらず、生産性が低下している点を課題視しています。紙に代わって電子インボイスで統一されれば、バックオフィス業務のデジタル化・効率化が目指せるため、官民連携のもとで電子化を普及推進しているのです。ただし、単に電子化するだけでは結局紙に印刷して保存する運用が残ってしまうかもしれません。そのため、電子インボイスではデータをやり取りする枠組みや仕様についても重要だとされています。

インボイス制度の開始に向けて求められる対応

区分請求書等保存方式からインボイス制度へ移行するにあたり、経理・会計業務にも変更点が生じます。どのような対応が必要なのか、確認しておきましょう。

請求書システムやフォーマットの見直し

インボイス制度では、現行の区分記載請求書の記載事項(発行者の名称や取引年月日、取引内容など)に加えて、「課税事業者の登録番号」「適用税率」「税率ごとに区分した消費税額」などの項目について記載することが必須となります。そのため、請求書をシステムで作成している場合には、必須項目追加の有無を確認しておかなければなりません。自社固有のフォーマットを使用している場合には、フォーマットの見直しが必要です。

業務フローや会計システムの見直し

インボイス制度が開始されると、仕入れ側・発行側双方にインボイスの保存義務が生じます。また、税区分ごとに会計処理し、税率ごとに仕入控除の計算を行ったり、受け取った請求書が適格請求書かどうかの確認をしたりしなければなりません。つまり、発行だけでなく受取時についても、経理業務の負担がより大きくなると想定されます。制度に対応するために、業務フローの改善や会計システムの見直しが求められることになるでしょう。

登録事業者になるための手続き

適格請求書には、発行事業者の登録番号の記載が必要です。ただし、インボイス制度への対応は必須ではないため、適格請求書発行事業者でない事業者とやり取りも生じる可能性があります。適格請求書発行事業者以外からの請求書では、仕入税額控除が原則できなくなってしまいます。経過措置もありますが、あくまで時限措置です。

適格請求書発行事業者になるためには、事前に国に登録しておかなければなりません。インボイス制度が始まる2023年10月1日から登録を受けようとする場合には、2023年9月30日までに登録申請書を提出する必要があります。消費税免税事業者は適格請求書発行事業者となりません。そのため、小規模事業者との取引が多い事業者は、取引先が登録事業者であるかどうかの事前確認も実施しておくようにしましょう。

電子インボイスの保存方法

電子インボイスは、発行する場合も受け取る場合も、原則、電子データで保存しておかなければなりません。そして、電子データで保存する際には、電子帳簿保存法の要件に基づいた保存が求められます。

電子帳簿保存法によると、電子データ取引は電子的に保存しておくことがすでに義務化されています。2023年末までは紙出力しての保存が宥恕(ゆうじょ)処置として認められています。「令和5年度税制改正大綱」によって、2024年1月以降も猶予措置として認められる予定ではありますが、限定的な措置です。措置はいずれ廃止になる可能性もあるため、早めに電子インボイスに備えておいても損はないでしょう。

※電子帳簿保存法については「電子帳簿保存法の電子取引とは?改正による影響や取引の種類について解説!」をご覧ください。

電子インボイスの標準仕様は「Peppol(ペポル)」に準拠

Peppolとは、電子インボイスなどの電子文書をネットワーク上でやり取りするための仕様や運用ルールを定めた国際規格です。ヨーロッパやオーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなど40カ国以上で利用されています。

インボイス制度の導入後には、PDFやWord・Excelファイルなど、さまざまな形式の電子インボイスが利用されると予想されます。そのため、EIPA(デジタルインボイス推進協会)とデジタル庁は、国内の電子インボイスの規格統一を図るために、日本の電子インボイスの仕様にPeppolを採用すると発表しました。

Peppolを活用すれば、電子インボイスのやり取りがスムーズになると考えられます。とはいえ、Peppolの規格以外でも、電子インボイスの発行・保存は可能です。自社の取引先や電子インボイスの規模などを見据えたうえで、どのような形式で運用するか検討するとよいでしょう。

電子インボイスがもたらす5つのメリット

電子インボイスが企業にもたらす主なメリットは、以下の5つです。

データ処理業務の効率化が図れる

複数の消費税率が混在している現在は、会計処理も煩雑です。電子インボイスの導入によって、業務の自動化・効率化とヒューマンエラー防止が期待できるでしょう。企業規模が大きいところほど、効果を実感しやすいと考えられます。

また、インボイス制度開始後に仕入税額控除の適用受けるためには、適格請求書の保存とともに、記載された事項を会計システムに反映させていく必要があります。その際、手入力だと、非効率なうえに人的ミスが発生するおそれもあります。しかし、電子データである電子インボイスであれば、「データの取り込み」「会計システムへの自動入力」などがしやすくなります。なお、データ取り込み・自動入力ができるシステムやツールは複数あり、相手方と会計システムが同じである必要はありません。

請求書の保管・管理が簡単になる

企業で発行・受領する請求書は、膨大な量になると予想されます。紙で保存すると、保管スペースや管理の手間・コストを要するうえ、必要なデータをすぐに見つけにくいところですが、クラウド等を活用し電子データで保存すれば、それらのデメリットが解決できます。

データ改ざんの心配が少ない

電子インボイスには、データ改ざんを防ぐためのさまざまな機能が用意されています。現状でいうと、電子帳簿保存法に基づく電子署名やタイムスタンプの付与などが挙げられます。さらにセキュリティ面の整備も推進されており、現在、総務省は「eシール」(欧州で始まった暗号化技術で、デジタル文書が企業・組織の発行したものであることを保証するもの)の導入も検討しているところです。経理人材や社内のセキュリティリテラシーは必要ですが、ハード面での体制は整いつつあるといえるでしょう。

請求業務のテレワーク対応が可能になる

現状では、まだ紙で請求書のやり取りをしているケースが多く、経理担当者が出社しなければ対応できない部分も大きいのが実情です。電子インボイスはネットワーク経由でやり取りできるように設計されているため、導入されれば、テレワーク対応も可能になり、経理担当者の働き方改革にもつながります。

海外とも取引がしやすくなる

多くの国で利用されているPeppolに準拠する電子インボイスを取り入れた場合、国際取引もスムーズになるでしょう。海外との取引の活性化や、グローバルな競争力強化が期待できます。国外への展開を考えている、もしくはしているといった企業においては、重要な要素です。

インボイス制度開始に向けて
電子インボイスの導入を検討してみよう

電子インボイスは、適格請求書を電子化したもので、2023年10月に控えるインボイス制度の開始に伴って注目が高まっているデジタル技術です。政府も普及を推進しており、標準仕様として「Peppol(ペポル)」の採用を発表しています。

インボイス制度に効率的に対応するためには、会計業務のデジタル化、DX化も一緒に推進することで、より大きな効果を得ることができるでしょう。インボイス制度開始をよい機会だと捉え、前向きにデジタル化を検討してみてください。