- 2023. 08. 25
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経理もテレワークは可能!必要な対応や環境整備を実施しよう
テレワークは、プログラマーやエンジニアなどの職種では多くの企業で多くの方々が実践しています。しかし、企業の重要情報を扱う経理部門では、テレワークは難しいかもしれません。経理部門でテレワークが進んでいない現状と理由、そしてテレワークを進めるための方法と注意点について紹介します。
- 目次
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経理業務のテレワーク対応の現状
一般的に経理部門においてはテレワークの導入があまり進んでいないといわれていますが、現状はどうなのでしょう。企業全体の動向としては、テレワークはコロナ禍の2020年以降急速に浸透しました。総務省の「令和4年 通信利用動向調査報告書(企業編)」によると、2022年度の調査でもテレワークを導入している企業は5割を超えています。産業別に見ると「運輸業・郵便業」「サービス業」等がやや低いといったばらつきはあります。しかし、それらの産業も2010年代の普及率と比較すると割合は大きく伸びており、企業全体で普及が進んでいるといっていいでしょう。
一方で、同資料によるとテレワークを導入しない理由として以下が挙がっています。
- テレワークに適した仕事がない
- 業務の進行が難しい
- 情報漏えいが心配だから
経理部門は請求書や領収書などの紙の書類で業務を行ったり、会計データといった機密性の高い情報を扱ったりします。つまり経理業務は上記のような特質をもつことが多く、テレワークを導入しにくい部門であることが分かります。
また、国土交通省の「令和3年度テレワーク人口実態調査-調査結果(概要)-」では、テレワークの実施率が低い職種の課題として「紙での処理、押印等で職場での作業が必要」「電話対応、郵便物の受け取り・発送等で職場での作業が必要」とあり、こちらも経理部の業務特徴と通じる内容です。
2つの調査から、経理部門は業務の特性からテレワークが難しい現状が推測できます。具体的に経理のテレワークが進まない要因を、次章で具体的に見ていきます。
経理のテレワークが進まない要因
経理のテレワークが進まない理由を、要因ごとに見ていきます。
出社が求められる業務が多い
経理は、経費の精算や請求書に関わる業務など、出社が必要な業務内容が多い部署です。書類の電子化が進んでいない企業では、出社して紙の書類をチェックする必要があります。
重要情報を扱うため、厳格なテレワーク体制を整えなくてはならない
経理部門が扱う書類は、企業のお金に関する取り扱いなど、事業の内部情報に関わる内容が多くあります。テレワークで対応するには、業務の電子化やクラウドサービスの利用などに加え、機密情報の保護やセキュリティ面での対策が必要です。
密なコミュニケーションが必要
経理部門は、業務連絡や他部門からの問い合わせなども多い部署です。直接書類を見て問い合わせ対応したい、対面のコミュニケーションの方が安心できる、といった声も少なくありません。
現金のやり取りが発生することがある
紙の領収書と現金を突き合わせての経費精算では、出社が必須となります。
経理業務をテレワーク化するために必要な対応や環境整備
経理業務をテレワーク化するには、次のような対応と環境整備が必要です。
テレワーク化に必要な対応
経理部門の準備として、次のような対応が必要です。
経理関係の書類を電子化
紙媒体の帳簿や決算関係書類を電子化することや、自社で作成・発行する請求書や領収書などの経理書類を紙ではなく電子データで作成することが該当します。
紙で受領した書類の電子化
電子帳簿保存法のスキャナ保存制度を導入します。それによって受け取った紙の請求書や領収書などについても、電子化を図ります
経理業務の電子化を推進する
出社が必要なハンコを止めて、電子署名に移行します。社内の承認プロセスにおいてもオンラインで対応できるよう、プロセス改変を行いましょう。
現金の取り扱いを減らす
現金のやり取りは、出社の必要性が生じます。そのため法人用クレジットカードや電子決済を導入し、経費精算の電子化を進めます。また企業間取引においてもインターネットバンキングを活用します。
テレワーク化のための環境整備
テレワーク化のための環境整備として次のような項目が挙げられます。
ネットワーク・PCのセキュリティ対策を万全にする
例えば、VPN(Virtual Private Network)を導入して、テレワーク拠点と本社を安全に接続し、データの送受信を暗号化すること。二段階認証を取り入れてパスワードだけでなく、別の認証要素を要求してセキュリティを強化することなどが該当します。常に最新のセキュリティソフトウェアを導入して、ウイルスやマルウェアからデバイスを保護することも重要です。
テレワークにおける社内ルールを策定し共有する
VPN接続や二段階認証といったセキュリティ体制を整えても、使う側の意識が徹底しないと、効果が薄くなってしまうかもしれません。OSは定期的にアップデートすることや、不用意にファイルやアプリケーションをダウンロードしない、といった社内ルールを徹底してセキュリティ意識の向上を目指します。
テレワーク時に円滑なコミュニケーションが取れる体制を確保
ビデオ会議による定期ミーティングやグループチャットでチーム全体のコミュニケーションを活性化させるなどしてメンバー同士の結束を高めましょう。1on1で不安や悩みを相談できる体制を整えることも重要です。
クラウドサービス等を含め、電子化に対応するためのツールを導入する
経理業務をテレワーク化するためにはテレワークに適した体制や業務フローを再構築することが必要です。必要に応じて電子会計システムや電子はんこツール、ワークフローシステム等の導入も検討しましょう。
特に、クラウドベースのシステム導入が経理部門のテレワーク化には有効でしょう。クラウドベースの経理ソフトウェアやデータストレージを導入することで、チーム全体でリアルタイムに情報を共有し、効率的な作業が可能になります。また、バックアップやセキュリティもクラウドサービス提供側で管理されるため、安心して利用できます。
アクセス権限の設定を
経理情報には機密性の高いものも含まれるため、必要な情報にのみアクセスできるよう、適切なアクセス権限の管理を行います。必要な情報にアクセスできないと業務が滞ることもあるので、細心の注意を払いましょう。
テレワークでは従業員の業務が目に見えないため、業務の可視化が重要です。タスク管理ツールやタイムトラッキング(時間管理)ツールを導入して、業務の進捗や生産性を評価し、必要に応じて改善策を導入します。
経理業務をテレワークで行う際の注意点
前項でも触れましたが、経理業務のテレワーク化で特に注意しなければならないのはセキュリティ対策でしょう。お金を扱う業務であるうえ、財務情報などを社外から閲覧できるようにするためセキュリティ対策を万全にしなければなりません。また、経理業務のテレワークは、クラウドサービスに依存するためベンダーやサービスの選択も重要な要素です。
また、テレワークという新しい働き方を導入するにあたり、勤務体制を見直すことも重要です。
フレキシブルな勤務時間の導入や規程とガイドラインの整備などによって、さらにテレワーク化が進むことでしょう。テレワークには、従業員が柔軟な勤務時間を取ることができるというメリットがあります。業務の締め切りや重要なタスクに合わせてフレキシブルな勤務時間を導入することで、従業員のワークライフバランスを向上させましょう。テレワークに関する明確な規程やガイドラインを策定し、全ての従業員に周知徹底することで、業務の円滑な運用やセキュリティの確保を図ります。
デジタル化を進めることで経理もテレワークできる
経理業務では、帳票や帳簿などを処理する時間が大半となり、それらが紙のままではテレワーク化が進まないのは当然です。他部門と同じようにテレワークが行えるよう、電子化を検討しましょう。また、クラウド対応システムの導入、現金対応を削減してキャッシュレス化を促進、ハンコ文化をなくす、などの対応も有効です。
経理部門だけテレワークができない場合、不満を生じさせる要因にもなりえます。全社的な取り組みで課題解決を進めていきましょう。